愚かな人類が滅んでいないたった1つの理由 何が起こるかは分からないが学ぶ過去はある
僕はずっと長い間、東洋史とか西洋史といった区別のないすべての世界の歴史=「全世界史」を書きたいという夢を持っていました。拙著『全世界史』では、20万年に及ぶ人類全体の歴史のなかの5000年くらいの歴史を語っていますが、それはおよそ5000年前からならば文字資料が残っているからです。
歴史を学ぶ意味
絵や考古学的遺品を基に考えると類推に頼ってしまう可能性を排除できないのですが、文字が伝える情報量はそれらと比べると情報量が圧倒的に豊富で、類推の余地の少ないファクトとしての価値が高いと考えられます。文字を基本にして歴史を考えるということは、とても意義深いのです。
現代を生きるビジネスパーソンには、「昔の歴史なんて興味がない」「現代史こそが大切だ」と言う人もいます。しかし、僕はこう考えます。人間が赤ちゃんから急に大人になるわけではないのと同じで、時代も一足飛びに「現代」になったわけではありません。積み重ねられた歴史を学んで初めて、僕たちは立派な「現代」をつくれるのではないでしょうか。
これは古代ギリシアの歴史家ヘロドトスの書いた文章ですが、大意は「人間はどうしようもない愚かな動物で、同じ失敗を繰り返している。自分は世界中を回って、人間について見たり聞いたり調べたことを書いておくので、ここから学んで少しは賢くなってくれ」ということです。ここに歴史を学ぶ意味が、すべて語られています。
現代史を振り返ってみると、冷戦の終結により、2000年代はバラ色の時代になるかと思われましたが、まず最初に起きたのは2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件でした。アメリカのジョージ・ブッシュ(子)大統領は、アルカーイダがテロを主導したとして、ビン・ラーディンを匿ったアフガニスタン(ターリバーン政権)に攻め込みます(10月)。
そして、早くも12月には、ハーミド・カルザイを首班とする暫定政権を樹立しました(2004年、カルザイは大統領に)。ビン・ラーディンは2011年5月、アメリカ軍によって潜伏先のパキスタンで殺害されましたが、アフガニスタンや隣接するパキスタンの政情はずっと不安定なまま推移しています。
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