愚かな人類が滅んでいないたった1つの理由 何が起こるかは分からないが学ぶ過去はある
最終的に、アラブの春はチュニジア、エジプト、リビア、イエメン4カ国の長期独裁政権を倒しました(シリアではアサド政権を倒すことができず内戦状態になりました)。しかし、その後、安定した民主政権を打ち立てることができず、リビアとイエメンでは内戦状態が続いています。エジプトでは、2013年に軍部によるクーデターが起き、現在に至っています。
2011年5月、アメリカ軍は、先述したようにビン・ラーディンを殺害しましたが、トップが倒されても、アルカーイダはネットワーク組織であるがゆえに生き延びました。加えて、内戦の続くイラクとシリアの国境地帯ではISILが跋扈(ばっこ)し、その活動領域を広げました(2015年11月13日にはパリの同時テロで130人の市民が死亡)。またシリアから逃れた難民はヨーロッパに殺到し、EUを揺るがす大きな政治問題となっています。
アメリカのシンクタンク、平和基金会が毎年公表している脆弱国家ランキング(2015)によると、南スーダン、ソマリア、中央アフリカ、スーダン、コンゴ民主共和国、チャド、イエメン、アフガニスタン、シリア、ギニアがワースト10で、イラクが12位、パキスタンが13位となっています。人口圧力の増大(特にユースバルジ=若者の膨らみ)や貧困がその背景にありますが、アフリカに脆弱国家が多く見られるのは、特権階級が私腹を肥やし、中間層を育てる仕組みが整っていないからだと考えられています。こうした脆弱国家が国際的なテロリストのベースキャンプになりかねないことが深く憂慮されています。ちなみに日本は157位です。
例を見ないスケールのテロ、世界的な金融危機、大自然災害、2000年代のスタートは、バラ色どころではなく、どしゃ降りの大雨で始まりました。
ケーススタディとして学ぶことはできる
こうした歴史をみると、人間の愚かさ加減にはほとほと愛想が尽きそうになりますよね。5000年の歴史を振り返っても、人の世というものが、ずいぶんいい加減で愚かしいものだということがよくわかります。しかしこれだけ愚かな人間がこれだけの愚行を繰り返してきたにもかかわらず、人類は今日現在も、この地球上で変わらず生きているのです。それはいつの時代にも人類の歴史から少しは学んだ人がいたからだという、たったひとつの理由に尽きるのではないでしょうか。
将来、世界で何が起こるかは誰にもわかりませんが、それに備える過去の教材はしっかりとそろっています。人類自身が文字にしっかり残している。歴史のすばらしいところは、人間がやってきたことを後からケーススタディとして学べることにあります。
最新の脳科学が教えるところでは、人間の脳は少なくともこの1万年の間はまったく進化していないとされています。男性はかわいい女性が好きだし、女性はかっこいい男性に引かれる。欲もあれば嫉妬もあるし、たくさん働けば何かおいしいものを食べたくなる。だとすれば、いまの僕らの悩みは、古今東西の人々がすでに経験してきたこととまったく同じなのです。ですから、歴史はケーススタディや教材として古びることはない。こんなに効率がよくて優れた教材はほかにはないのです。
そういう優れた教材としての歴史から学ぶことが、人類や個人個人がいろいろな場面で困難に遭遇したとき、必ず何かの役に立つはずだと思っています。
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