仮想通貨の疑問は「宋銭」を知れば腑に落ちる 経済は「歴史」から学ぶとよくわかる

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暗号通貨は今後、世界貨幣となる日が来るのか(写真:奈良観光/PIXTA)
フィンテックと呼ばれる金融テクノロジーの進化が生み出した暗号通貨(仮想通貨)をめぐっては、各国でその対応が分かれている。暗号通貨は今後、世界貨幣となるのか、それとも一時的なあだ花となるのか。
それを正確に予測することはできないが、歴史を学ぶことで、過去に存在した「似た事例」から、暗号通貨の本質や当時の社会に起こった現象を理解し、そのヒントを探ることは可能だ。『日本史で学ぶ経済学』を上梓した横山和輝准教授に、平安時代に存在した「暗号通貨と似た事例」について解説してもらった。

ビットコインなど、仮想空間でマイニング(採掘)された通貨、いわゆる暗号通貨をめぐる議論が活発化している。暗号通貨による資金調達(ICO)に乗り出す企業も少なくない。南米では財政難の打開策として暗号通貨に希望を見いだす国々も現れた。一方で、中国のように暗号通貨取引に厳しい規制を敷く国も現れた。

このように今、新しい通貨をめぐって、人々の行動を国家がどのようにルールづけすべきか、大きな問いがつきつけられている。そして現代のこうした状況を踏まえると、鎌倉・室町時代の日本も、似たような激変に直面していたことに気づかされる。

貨幣経済を選ばなかった民衆

8世紀初頭に鋳造された和同開珎をはじめ、奈良・平安時代の日本では金属貨幣(以下、銭貨としておく)が使われていた。ただし、村落民が租税を納めるときは、銭貨が用いられずにいた。中央政府には塩や紙など各地方の特産品や労役を提供し、さらに地方税として主にコメを納めるように定められていた。

『日本史で学ぶ経済学』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

しばらくは銭貨が交換手段として重宝される時代が続いていたが、平安時代の後期には商人でさえも銭貨を受け取らなくなっていた。なぜか?

実は当時の銭貨は精錬・鋳造技術の面で粗悪であった。このために銭貨の価値が低く見積もられ、中央政府は銭貨の価値をより高めに、つまり物品の価格をより低めに設定するよう命じたのだ。こうした法令への嫌気から、人々は銭貨を使わなくなった。

そして当時は、銭貨を使わずとも、コメや綿布のようなニーズの高い物品が交換手段として代用できた。たとえば、海産物を手にした相手にコメあるいは綿布を差し出せば、相手は引き換えに海産物を手放してくれやすい。手放してくれたら交換は成立である。

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