「VR体験」を脳と体はリアルな体験と誤認する バーチャルリアリティーの果てしなき未来

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VRは脳も体も本物の体験だと認識してしまうほど強烈なものである一方で、これを応用すればVRの未来は果てしなく広がるかもしれない(写真:ViewApart/iStock)

PTSD、人間関係、身体問題、環境問題、弱者への共感、慢性疼痛、スポーツトレーニング、教育、などなど。バーチャルリアリティー(VR)はこれほどまで多くのことに応用できるのか。『オンデマンド経験-バーチャルリアリティーとは何か、それはどう機能して何ができるのか』という原題が示すように、VRはいとも簡単に必要な「経験」をもたらし、さまざまな応用が可能なのだ。

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一度経験すれば、VRに対する見方がまったく変わると言われたことはあるが、いまだにその経験はない。たかがゲームを面白くする、あるいは、映像メディアの延長だろうと思っていたのは浅はかだった。VRのことをまったく知らなさすぎたといえばそれまでだが、この本の内容には心底おどろいた。

著者、スタンフォード大学心理学教授のジェレミー・ベイレンソンによると、「VR経験は『メディア経験』ではなく『経験』そのもの」である。驚くべきことに、あくまで仮想空間での体験であっても、VRでの体験はあまりに強烈なために、脳も体も本物の体験だと認識してしまう。それをさまざまな目的に利用できるという。いくつかの事例を紹介しよう。

PTSD患者にVR経験の治療が有効な理由

9.11の同時多発テロの仮想空間を構築する治療用VRが作成され、PTSD(心的外傷後ストレス障害)患者の治療に使われた。ある若い女性患者ではPTSDの症状が90%おさまった。十分な精神的トレーニングを積んでいたにもかかわらず、9.11の壮絶な経験からPTSDになった消防司令長の場合は、VR経験により「自分の死を心から確信する」ことがPTSDの原因だったことがわかり、記憶の修正にとりくむことができ、症状の大幅な改善につながった。

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