「時価」で売るプロ野球チケットは浸透するか 価格コントロールが球団経営にもたらす効果

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一方、他球団(全試合一律料金の巨人・広島と、「平日料金」「土曜休日・対巨人戦料金」の区分のみを設けている阪神を除く)は、日程・対戦カードごとに事前に料金を定める方式を採用している。

たとえば、埼玉西武ライオンズはメットライフドームでの試合において「フレックス制度」と称して、料金の高い順に「スーパープレミアム試合」「プレミアム試合」「スタンダード試合」「バリュー試合」の区分として設定している。

単純に、平日と土曜休日で料金差を設定するのではなく、対戦カードやイベントの有無などの要素を勘案した料金設定としている。

一例として、8月土曜日の対北海道日本ハム戦では「獅子風流(ししぶる)ユニフォーム」全員配布と、歌手渡辺美里さん来場が実施された4日は「スーパープレミアム試合」として販売されたが、18日(土)は「プレミアム試合」として販売、翌19日(日)は「スタンダード試合」として販売した。

観客動員数の最大化が変動価格導入の目的

「フレックス制度」導入の狙いと効果について、埼玉西武ライオンズは「ファンの皆さまのニーズに柔軟に対応する“適正価格”の実現と、年間観客動員数の最大化が主な目的であり、導入以前(2016年)と比較して一定の成果が出ている。2018年からはより一層柔軟に対応するため、価格設定を1段階増やした4段階で販売している」と説明する。

8/4(土)渡辺美里メットライフドーム来場試合(西武vs日ハム)のチケットは最も高額な「スーパープレミアム試合」として発売されたが試合開催前に完売した(筆者撮影)

また、今後のダイナミックプライシング導入の可能性については「現時点では予定はないが、必要性が出てきた時点で検討する」(埼玉西武ライオンズ)。

なぜ、プロ野球で試合ごとに料金を変動させる取り組みが拡大しているのか。

プロ野球の興行では、収益面・費用面の両方で制約があることを考慮する必要がある。

まず収益面の特徴としては、プロ野球球場では座席数は固定的で入場料収入には上限が定まっていることから、入場料収入の極大化のカギの1つは稼働率向上にある。チケット価格を上下させることで稼働率をコントロールするとともに、入場料収入の極大化を図る手法がダイナミックプライシングである。

一方、費用面では「固定費」が多くを占めていることが特徴だ。「固定費」は収益と違って、コントロールすることが難しい。具体的には、球場運営ではチケット販売、チケット確認、グッズや飲食物などの売店、手荷物検査を含む警備、清掃、グラウンドでの補助業務や整備、バックヤード業務など多岐にわたる業務を営むために多くのスタッフを必要とするが、入場者数が少ない場合でもこうしたスタッフ(の人件費)を大幅に削減することは難しい。また、試合開催日には水道光熱費も多く発生する。

スタッフの人件費と水道光熱費は、試合開催日に必ず一定額として発生する「固定費」である。そして当然のことだが、選手・監督・コーチへの人件費も発生している。

その他の「固定費」としては、試合開催の有無にかかわらず発生する球場施設の維持管理費・減価償却費または賃借料、球団職員への人件費、役員報酬、および固定資産税の租税負担などがある。これらも入場料収入によって回収する必要がある「固定費」である。

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