「時価」で売るプロ野球チケットは浸透するか 価格コントロールが球団経営にもたらす効果

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2016年シーズンに福岡ソフトバンクホークスがヤフーと共同で福岡ヤフオク!ドーム開催試合のチケットの一部で、AIを活用した価格変動制を試験的に実施した。

これを皮切りに、2017年シーズンでは三井物産がソフトバンクおよび東京ヤクルトスワローズとタイアップして試合の一部でチケット価格を変動させる実証実験を行ったほか、東北楽天ゴールデンイーグルスは2017年シーズンからチケットの価格変動制を正式に導入している。

楽天イーグルスのホームページには、楽天生命パーク宮城開催の一軍公式戦の価格は、試合日・席種によって異なること、価格は販売期間内で変動するため購入時に球団WEBサイトなどで最新価格を確認すること、また支払価格はチケット予約・購入時の価格が適用され、後日価格が変動しても差額の請求や返金はしないことが明記されている。

楽天戦のチケットは時間ごとに価格が変わる点で「時価」で販売されているといえる。

たとえば、楽天生命パーク宮城での「フィールドシート3塁側」の大人の前売券価格は、対埼玉西武ライオンズ戦8月10日(金)では4900円であるが、翌日11日(土)と12日(日)は6200円である。また、対福岡ソフトバンク戦8月31日(金)は4200円となっていた(いずれも、8月7日14時30分時点での筆者調査)。ちなみに、31日(金)の試合は8月27日20時00分時点では4700円となっていた。このように、価格を変動させているのだ。

楽天が導入した狙いと効果

楽天野球団は「ダイナミックプライシングは当社にとっては、単価を上げることによる売上最大化施策ではなく、これまでなかった販売機会を創出することによる収益化施策と位置づけている。

だいたい試合の1週間前くらいから販売の最後の山がやってくるが、今週末野球観戦に行こうと思い立っても、その時点では最悪の場合は完売のケースもある。そのうち幾分かのお客様はこの機会での観戦自体をあきらめてしまっていると思われる」と分析する。

導入の狙いは2つある。

「1つ目は、価格に弾力的なお客様を、売り切れ間近な商品からそうでない商品に誘導することにより、できるだけ試合開催日の直前まで多くの試合・席種のチケットを買える状態にすること、もう1つは、売れ残りを出さずにお客様の手元にチケットが行き渡るようにすること」(楽天野球団)

ダイナミックプライシング導入前の2016年はスタジアムの稼働率が87%、導入後の2017年は97%、今年は8月現在で93%に達し、価格のコントロールは年々難易度が高くなってきているという。

「これまでの価格変動のデータが蓄積されてきたので、価格を自動的に変更する運用を今年から開始している。価格のコントロールは年々難易度が高くなってきているが、価格コントロールの成果で、早期にチケットが完売するケースは減ってきている。当社の取り組みがダイナミックプライシングの拡大につながる契機の1つになればうれしい」(楽天野球団)

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