「メディア起業家」の時代がやってくる ビジネス書のカリスマ、ダニエル・ピンク氏に聞く
スーパーニッチな地元紙に商機あり?
それから、メディアビジネスは一般的に、極度にローカル化することに大きなチャンスがあると思う。人々が気になるのは、自分の特定のエリアで何が起こっているか、ということだ。私の場合であれば、交通渋滞や、子供の学校のことなどが大きな関心事だ。
こういうことは、広い領域をカバーしている大手の新聞ではやっていない。ニューヨーク・タイムズ紙にしろ、ワシントン・ポスト紙にしろ、多くの新聞社が東京に支社を置いているが、いっそのこと、地元の町のブロックごとに支社を置いて、そのブロックで何が起きているか報じたらどうだろうか。
自分の身近な地域で起こることのほうが絶対に面白いし、そういうところは、なかなか情報ソースがなかったりする。もしも近所の人々のメールアドレスのリストが載っていたら、ワシントン・ポスト紙よりも、はるかに読まれるだろう。なぜなら、自分たちにすぐに影響が及ぶからね。
だから、ワシントン・ポスト紙はおそらくそういうビジネスをすべきで、ベゾスと話す機会があったら、ぜひそう伝えておいてほしい(笑)。
対話型の関係を前提としたモデルが必要
――ビッグデータの影響も含めて、本の売り方はどう変わりそうか? 特に、日本の出版市場は縮小しているのだが……。
待ってくれ。そうだとすれば、作家である私には浮揚力が必要だ(笑)。
アメリカでも同じように、出版業界はそうとう変化している。繰り返しになるが、作家と読者の関係は変化している。以前は、作家は上から目線で「教えてやろう」という態度だった。これは時代遅れのやり方で、今はもっと会話的になっている。モノローグ(独白)ではなく、ダイアローグ(対話)なのだ。
たとえば、私は本を執筆するときに、読者からの電子メールを受け取れるようにしている。それで、読者から質問やコメントを受け取って、それに返答したり、読者と議論することもある。
ツイッターはもっと会話的で、何かをアップすると、どんどん反応が来る。誰かがツイッター上で、「ダニエル・ピンクの本を読んだ。とてもよかった」とつぶやいてくれたら、私は多くの場合「この本を手に取り、楽しんでいただけて、とてもうれしく思っています」と書き込む。
さらに、私は無料ニュースレターも発行している。書いたこと、読んだこと、考えたことなどを伝えると、人々は返事をくれる。
そういうことについて、考えなくてはならないと思う。