「メディア起業家」の時代がやってくる ビジネス書のカリスマ、ダニエル・ピンク氏に聞く

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――あなたがニュースを読むときは紙媒体? それともデジタル?

私は地球上で物理的な新聞を読む最後の人類になるだろう。NHKの特集番組で取り上げられるかもしれないね(笑)。

ダニエル・ピンク
1964年生まれ。エール大学ロースクー ルで法学博士号取得。クリントン政権下でゴア副大統領の主席スピーチライターなどを務める。フリーエージェント宣言後、世界各国の企業、組織、大学を対象 に講義やテレビ出演を行う傍ら、ワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙などに精力的に寄稿してきた。著書に『フリーエージェント社会の到来』 (ダイヤモンド社)、『ハイコンセプト』(三笠書房)、『ジョニー・ブンコの冒険』『モチベーション3.0』(以上、講談社)などがある。

紙とタブレットの両方とも使うけれども、どちらかといえば、本はタブレット、新聞は紙が多いかな。新聞の場合、ウェブサイトと比べて、紙のほうが全体を見てとれる。それから、ピンポイントで、特定テーマのページにいける。もちろん、ウェブ上でクリックする形でもいいけれど、全体を見るときは紙のほうがいい。

その点で言うと、私は少し旧式のようだ。きっと子供の頃から、親が新聞を読む姿を見てきたので、習慣になっているのだと思う。本にしても、紙媒体は読みながら書き込みができるけれども、電子書籍ではそれができないしね。

――メディア産業は今後どうなると思うか。たとえば、アマゾンのベゾスがワシントン・ポスト紙を買収したりしたが、ニュースは変わっていくのだろうか。

ワシントン・ポストは私のホームタウンの新聞なので、興味深い問題だ。ニュースの入手方法について、ありとあらゆるモデルがあるので、メディア起業家にとってはすばらしい時代だろうと思う。既存メディアには恐怖の時代で、メディア起業家でいるほうが刺激的だと思う。ただ、どのようなメディアが機能するかはわからない。

足し算よりも引き算で考える

――新聞で小さな変化を起こすとすれば、どんなことができるだろうか?

難しい質問だが、たとえば、私たちはすぐに何が足りないのか、何を加えようかと考える傾向がある。その前に、何をなくせばよいか、何を引くかと考えてみたほうが、もっと有効だと思う。新聞の中で、もはや必要なくなったものは何かと、問いかけるんだ。

物理的な新聞の場合、株価に多くのページを割いているが、本当に必要だろうか。時間的にも、空間的にも、無駄ではないか。だとしたら、なくしてしまえ。上映映画のリストも必要だろうか。誰もそんな方法で映画をチェックしない。だとしたら、なくしてしまえ。そうやって、いろいろと省いていけば、毎日、数ページ分の空きができる。そこで、少し違う角度から見て、どんなことが起こっていて、どんな対応をとれるのかと再考してみるんだ。

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