「メディア起業家」の時代がやってくる ビジネス書のカリスマ、ダニエル・ピンク氏に聞く
ビッグデータ時代に重要なのは「見抜く力」
――ツイッターやSNSなどでみんながコメントし、世の中はいろいろな情報であふれかえっている。まさにビッグデータの時代だが、それによってセールスにどんな影響が及ぶのだろうか。
ビッグデータによって、「同調」に敏感になり、「明確性」が重視されると思う。
まず、顧客に対する同調は、はるかにやりやすくなる。人々が何を考えているか、何に関心を持っているかについて、実際に根拠が得られるからだ。そして、明確性ももっと重視されるようになる。というのは、こうした情報がすべて入手できるので、みんなにそのことを納得してもらう必要があるからだ。
ただ、すべてのデータがあるからといって、すべてを理解しているわけではない点に注意しなくてはならない。私たちがすべきなのは、そうしたデータを入手したら、どれが重要で、どれが重要ではないかを見分けることだ。そして3歩後ろに下がって、全体像を見ていく。
――あなたの著作は世の中の変化やトレンドをとらえた提案が多いが、未来を思い描くために、どのようなことをしているのか。
作家であることのすばらしさのひとつは、大勢の人々と話をして、通常よりも多くのことを知ることができることだ。私はたくさんの質問をするが、これは何かを学ぶうえで、かなりよいい方法だ。いろいろなことを知っている人を探して質問をする。
関係ない分野にもアンテナを張る
それから、情報や興味のあることに対して、ある種の「スポンジ」を持ったほうがいい。私はつねにメモを持参し、アイデアや気になったことを書き留めるようにしている。
たとえば、このページには「Miyazaki」とある。これは今回の出張で、誰かから、宮崎駿監督が『風立ちぬ』という新しい映画を出したことを聞いたから、ぜひ見ようと思ったのだ。来日の目的はビジネスなのに、なぜ宮崎映画を見たいのかと思うかもしれない。私はもともと彼の映画が好きだが、それは生き方、ストーリーの作り方、創造力とは何かを教えてくれるからだ。
それから、「1つ目は無料」と書かれているのは、エージェントと本のタイトルの話で盛り上がったから。フレーズだけで、内容はまったく考えてないけれど(笑)。
こうやって気になったことを書き出して、定期的に振り返る。ほとんどがたわいないものだが、たまにすごくヒントになることが見つかる。それから、自宅のオフィスには、新聞や雑誌の記事の切り抜きを集めた「インボックス」という大きなファイルがある。