《MRI環境講座》第2回 企業にとっての“環境問題”

■今、求められる“環境経営”とは-持続的な発展に向けたイノベーションの機会として

 経済、そして企業にとって、“環境問題”は、いわゆる外部コストとして存在してきた。しかし、現代の環境問題は、“外部”として取り扱うには、あまりにもその影響の規模、範囲が大きくなり過ぎた。先に“CSRの傘に収まりきらない可能性”と書いた。第1回にも記したが、現代の環境問題に対応するということは(例えば、“清廉潔白”さを見せる、追求するというよりも)、“サバイバル”を意味すると捉えられる。

 業種、業態によっては、従来のビジネスマーケットが急速に悪化、縮小する可能性もある。従来のスキームでは成立し得ないコストが発生することも想定される。ほどほどの対処、対応では、意味をなさなくなったと言えるだろう。

 では、“ほどほどの対処、対応”から抜け出すために、どう考えればよいであろうか。以下に、そのためのいくつかの仮説を示す。

“ほどほどでない対処、対応”を支援するいくつかの仮説
・CSR経営の拡大、浸透が示唆するもの一つは、マルチステークホルダーに対する関心、配慮、コミュニケーションの必要性であろう。現代の“環境問題”が、我々の経済社会の(全ての)基盤である“自然システム”に起因することを勘案すれば、“マルチさ”の一層の拡大−対象、時間軸−、そして、それらへの係わり方の変化、進化が、新たに要請されている。
・具体的には、経済社会と“自然システム”との関係性の見直し、そして、人類の持続性の確保のための様々な仕組み、基盤の再構築が必要である。おそらく、企業はそれを実現、推進していくための有効な器であり、機能であろう。
・こうした意味で、21世紀において持続的な発展を目指す全ての企業は、大いなる“機会”に直面している。その重要な部分は、従来のやり方、延長線からの脱却(“破壊”)、そして“自然システム”と調和する新たな技術、プロセス、市場の構築(“創造”)を実現すための“イノベーションの機会”である。
出所:MRI
 環境問題は、短期的には(既に現在においても)企業に新たな制約やコスト負担を与え、一方で、新たなビジネスの機会を生みだしている。より中長期的にみれば、より多くの企業にとって、自らの生産や業務のプロセス、提供する製品・サービスに対して、そして、市場や社会におけるイノベーションの機会が提供されている。21世紀に持続的な発展を遂げることになる企業は、このイノベーションの機会を恐らくモノにしているはずだ。

 今、求められている“環境経営”とは、この仮説を実践、検証しながら、“ほどほどでない対処、対応”に向け、大胆、迅速に、そして適切に見極めながら自らの進むべき道、手段を構築していくことである。

 次回は、環境問題が提供する、かような“機会”を獲得するためのアプローチについて考えてみたい。
《プロフィール》
株式会社三菱総合研究所
環境フロンティア事業推進グループ/環境・エネルギー研究本部
環境・エネルギー研究本部は、環境・エネルギーに係わる様々な専門分野を持つ約100名の研究員により構成。その前身の地球環境研究本部は、リオ・サミットの前年である1991年の創設以来、国などにおける環境関連政策、制度設計の支援、関与など中心とし幅広い実績を持つ。
また、企業における環境問題への取組の浸透、拡大等が進む中、先進的な環境関連の事業、ビジネスを支援する機能として、環境フロンティア事業推進グループが2007年10月に設立。電話番号は、03-3277-0848

吉田直樹 主席研究員
環境フロンティア事業推進グループリーダー(兼)環境・エネルギー研究本部
様々な企業における環境・CSR経営システム、事業戦略の構築、次世代“エコ”商品・サービス開発の支援などの業務を手がける一方、真に環境コンシャスな企業、環境問題を成長機会として捉え、活かしている企業の評価の手法、そしてこれらへのファイナンスの仕組みなどを開発中。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2008年6月5日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • トクを積む習慣
  • iPhoneの裏技
  • 就職四季報プラスワン
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
日系小売企業が本格進出<br>変貌するインドビジネス

日系企業は製造業が半分近くを占めるインド市場。ここへきて小売企業の進出表明が相次いでいます。サントリー、ココイチ、セブン-イレブン、ユニクロ、メルカリなど、人口増と若者の旺盛な消費意欲を取り込む各社の戦略に迫ります。