バイト先で「VIP待遇」を受ける若者のリアル 寿司に焼き肉、シフトのドタキャンも日常?

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原田:(爆笑)。バイト先から感謝されて、バイト代がプラスされるかもしれないね。この先、バイト先は人材不足による人件費のさらなる高騰で、ギリギリまで利益を削られるようになっていくかも。ただ、お金を出し続けるのにも限界があるから、お金ではない要素で若者を惹き付ける施策を各バイト先は真剣に考えないといけないね。

シフトの自由度が大事。「懇親会」はウザくない

原田:学生バイトにお金以外の「特典」を用意してるバイト先も、すでにあるんだよね?

牧之段:僕はWebメディアを運営しているベンチャー企業で編集のバイトをしています。ここでは定期的に社員さんとの懇親会があって、学生だと行けないようなお店でご飯をご馳走してくれるんですよ。客単価1万円くらいの焼き肉とか。先日は会社に寿司職人さんを呼んで寿司パーティーでした。

原田:客単価の高い焼肉ってことは、結局「お金で釣る」ってことだけどね(笑)。だけど年長者との懇親会って煩わしくないの?

牧之段:今時の学生がバイトをする目的って、お金だけじゃないんですよ。自分のコミュニティを作っておきたいというか。だから懇親会はとても大切なんです。たとえば、僕の友人で塾講師のバイトをしているやつは、大学でサークルにいっさい入ってないんです。理由を聞くと、「バイト同士が仲良くて皆でディズニーランドも行くし、そのうえでお金も稼げるんだから、サークルなんかやる必要ない」とのことでした。

原田:これだけめちゃくちゃ好待遇のバイト先だと、バイト同士も仲良くなりそうだよね。バイトの条件が悪いうえにバイトの店長も厳しかったら、バイトメンバーの仲はぎすぎすしそうだけど、それとはまったく逆だ。

写真右より正田郁仁(法政大学経営学部2年)、神谷菜月(明治大学経営学部3年)、須田孝徳(早稲田大学大学院商学研究科修士1年)、一番左が山切萌香 (明治大学経営学部3年)(写真:筆者提供)

 

正田:僕は個別指導塾でバイトしていますが、学期末に講師同士の懇親会が開かれます。誕生日会もあって、プレゼント交換もしますよ。

原田:「バイトが必死に働いてお金を貯め、そのお金で車を買う」なんて時代は今は昔なんだね。今の学生にとって、バイトは好条件のなかで程よく働き、バイト先の仲間とわいわい楽しく過ごす場になってきているわけだ。バイトにコミュニティ形成以外のメリットを見いだしてる人は?

須田:僕は以前、中央線沿線の某商店街にある靴屋でバイトしていました。めちゃくちゃ忙しいのに時給は1070~1080円とそれほど高くなかったのですが、シフトの自由度がとても高いので気に入っていましたね。休むのに仮病を使ったり親戚を殺したりしなくていいんです(笑)。授業やゼミが忙しいって言えば、すぐ休めました。

神谷:私もシフト自由度の高さは重視しています。ドイツ菓子のベーカリーで小さな子にお菓子づくりを教えるバイトと、日本料理屋さんのバイトを掛け持ちしてるんですが、どちらも個人経営なのでものすごくシフトの融通がきくんです。「今日ちょっとインターンの面接が」「今日3時間しか入れないんですが」と言っても、いっさい嫌な顔はされません。

原田:今の学生はSNSで友達数が増えているから、以前に比べると社交の場が非常に多くなってるよね。「今、渋谷いる?」といった友達からの急な誘いも、SNS以前や携帯以前より断然増えている。それに今時の子はお金にあまりガツガツしなくなってきているから、コストパフォーマンスより「タイムパフォーマンス」を重視するようになっている、と言えるかもしれない。

正田:僕の個別指導塾も、授業がない日に事務作業をするだけでも、ちゃんと時給が発生します。

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