小泉進次郎氏は「石破支持」に踏み切れるのか 自民党総裁選の唯一の見どころだ

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もちろん、最大の焦点は首相と石破氏のどちらを支持するのか、だ。石破氏は「小泉氏と意見交換の場をつくりたい」と繰り返し、10日の出馬会見でも、小泉氏らが打ち出した国会改革について「若手の方々の提言を尊重したい」と語るなど、ことあるごとに小泉氏に秋波を送っている。

これに対し、首相サイドは「小泉氏に(首相支持で)下手に圧力をかけると、逆効果になりかねない」(細田派幹部)との懸念から、「当面は静かに対応を見守る」(同)構えだ。ただ、筆頭副幹事長の小泉氏は「総裁選でも調整役として準備にあたる役職」(自民幹部)だけに、「表立って多数化工作などには加担しにくい」(同)ことに加え、直属の上司でもある二階俊博幹事長が今回は首相支持で突っ走っているため、「行動が束縛されている」(小泉氏周辺)ことも否定できない。

その一方で、今回の総裁選での小泉氏の対応は、「首相と石破氏の集票合戦への影響だけでなく、将来の首相候補としての器量も試される」(首相経験者)ことにもなる。小泉氏は6年前の総裁選で、1回目、決選投票ともに石破氏に投票したが、それを公表したのは投票直後だった。

当選1回ながらすでに国民的人気者だった当時の小泉氏は、当初は事前に誰に投票するかを公表する意向だったが、各陣営が小泉氏の支持を求めて争奪戦を演じたため、「迷惑をかける」との理由で投票まで沈黙を守った。併せて小泉氏は、決選投票で自らが支持した石破氏に逆転勝利した首相に対しても「新しい自民党をつくってほしい」とエールを送ってみせた。

「真夏の夜の夢」は石破氏の推薦人?

ただ、小泉氏はその後の大向こうをうならせる政治活動で、いまや各メディアの世論調査の「首相にしたい政治家」では断然トップという「自民党のスーパースター」(党幹部)にのし上がっている。それだけに「総裁選への影響力も6年前とは段違い」(同)で、前回のように投票後の公表では「逃げ優先でリーダー候補としての度量が問われる」(自民長老)との指摘が多い。

今回の小泉氏は「将来も見据えての決断」を迫られているだけに、公表のタイミングやそれに伴う行動も「政治的にも極めて複雑な要素が絡んでいる」(同)ことも間違いない。石破氏を支持すれば首相サイドから「反安倍に加担した人物」として敵視され、首相支持に回れば「安倍政治を批判してきたのに日和った」などと罵声を浴びるのは確実だからだ。

そこで、劣勢を強いられている石破陣営が「真夏の夜の夢」として期待するのが、小泉氏の告示前の石破氏支持表明と推薦人名簿への登載だ。「もしそれが実現して、小泉氏が石破氏の決起集会に駆け付け、その後の地方遊説にも同行すれば、地方票も地殻変動を起こす」(石破氏側近)と夢を膨らませる。たしかに、2001年春の総裁選では、小泉氏の父親・小泉純一郎氏(元首相)を当時の国民的人気者だった田中真紀子氏(故・田中角栄元首相の娘で元外相)が「私は変人の母」などと応援して、地方票圧勝による逆転勝利につなげた歴史もあるからだ。

判官びいきとされる国民感情からも、「崖っぷちに追い込まれている石破氏を敢然として小泉氏が支持すれば、党員だけでなく国民も大喝采する」(首相経験者)ことは想像に難くない。しかも、メディアは「候補者そっちのけで小泉氏の言動ばかりを追う」(民放テレビ局幹部)ことで、「総裁選自体が小泉劇場と化す」(同)のは間違いない。

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