竹下派が自民総裁選を「自主投票」にしたワケ

3年後のキングメーカーを狙った戦略なのか

竹下亘氏、石破氏支持を打ち出すも、派内の一本化はならず(写真:共同通信)

台風一過で国会周辺にも猛暑が戻る中、9月の自民党総裁選をめぐって党内第3勢力の竹下派(55人)が自主投票に追い込まれた。同派衆院組の多数が安倍晋三首相を支持する一方、参院組は石破茂元地方創生相支持で固まり、一本化しても分裂が避けられない状況となったからだ。同派は9日に長野市で開いた地方例会で、「総裁選は自主投票」との方針を正式決定する一方、「総裁選後の一致結束」も申し合わせた。しかし、派内には「大派閥なのにまた総裁選での草刈り場になる」(派若手)との不安と不満が広がる。

党内では同派出身の二階俊博幹事長(二階派会長)から「派閥の体をなしていない」と揶揄され、竹下氏の兄の故・竹下登元首相が作り上げた結束力抜群の「竹下軍団復活」にも失敗したことで、竹下氏の派閥領袖としての求心力を問う向きもある。

ただ、淡々とした表情で自主投票を決めた竹下氏に対しては「今回の行動は3年後を見据えた長期戦略」(党長老)との見方もある。ほとんどの派閥が「首相支持」になびく中で、あえて波乱の芽をつくったのは、「次の次の総裁選でキングメーカーになるための布石」(同)という読みだ。兄は「10年たったら竹下さん」とのズンドコ節を歌って首相になったが、弟には「3年たったら竹下さん」と派閥領袖として総裁選を切り回す野望がにじむ。

参院は「青木氏主導」で石破支持、衆院は「安倍親衛隊」

同派を率いる竹下亘総務会長は「総裁選での政策論議の活性化」を大義名分に石破氏支持での1本化を模索していた。8日午後に都内で開いた同派臨時役員会には、会長の竹下氏、会長代行の吉田博美参院幹事長と茂木敏充経済再生相ら8人の幹部が出席した。だが、早々と石破氏支持で固まっていた参院側に対し、衆院側は茂木氏を先頭に大半が首相支持を強く主張した。そのため、当初想定していた「会長一任」が困難となった。

同派所属議員は衆院34人、参院21人という構成だが、「伝統的に参院が強い」とされてきた。今回も、かつて「参院のドン」と呼ばれ政界引退後も竹下氏の後見人として同派に強い影響力を持つ青木幹雄元参院議員会長が、同派の参院会長の吉田氏に参院側の石破氏支持を求め、吉田氏も応じた。しかし、衆院側は「いつまでも参院の言いなりにはならない」と反発し、対立を深めた格好だ。

青木氏が石破氏支持にこだわったのは、首相の強権的な政治手法へ反発もあるが、後継者である長男・一彦氏の選挙区事情が「最大の要因」とされる。2016年参院選から合区となった「鳥取・島根」選挙区で石破氏が一彦氏を全面支援しており、青木氏が吉田氏を通じて同派参院側を石破氏支持でまとめたのは「石破氏に借りを返すため」(吉田氏周辺)とみられている。

これに対し衆院側は、首相の側近を自認する茂木氏や加藤勝信厚生労働相らの"安倍親衛隊"をはじめ、首相支持派が圧倒的多数だ。茂木氏らは首相支持を貫くことで、総裁選後の内閣改造・党役員人事での優遇を狙っており、「調整型政治家」を自認する竹下氏にとって「衆参板挟みの中で、自主投票しか選択肢がなかった」(派幹部)とみられている。

その結果、同派55人は「総裁選で首相支持と石破氏支持でほぼ真っ二つに割れる」(幹部)ことになる。衆院側にも数人の石破氏支持派がいるためで、「他派閥との連携どころか、派内に疑心暗鬼が広がる」(同)との不安は隠せない。8日の役員会で事実上の自主投票を決めた後、竹下、吉田、茂木各氏らは「総裁選が終わったら一致団結する」ことを確認したが派内に後遺症は避けられそうもない。

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