安倍流独裁、「杭はすべて打つ!」の制圧作戦 「出る杭」「出ない杭」「出たい杭」の造反は?

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7月29日、西日本豪雨の非常災害対策本部会議で発言する安倍首相。国会が閉幕し、月末は災害対応以外は政治日程なし(写真:共同通信)

西日本豪雨に続く逆回り台風など、"災害列島"にメディアの関心が集中する中、永田町では9月の自民党総裁選での安倍晋三首相(総裁)3選に向けた「党内制圧作戦」が着々と進んでいる。国会閉幕直後の岸田文雄政調会長の撤退宣言で党内各勢力は、「勝ち馬に乗るしかない」(ベテラン議員)と安倍支持に雪崩を打ち、首相の正式出馬表明も待たずに大勢が決しつつある。まさに「幕が上がる前に芝居を終わらせる」(細田派幹部)という首相サイドの思惑通りの展開とみえる。

首相の唯一の対抗馬とされる石破茂元幹事長は孤軍奮闘しているが、党内の視線は概して冷たく、早々に戦いの場から去った岸田氏の周辺からは「これでのんびりと夏休みが取れる」といった自虐的な声も漏れてくる。「こつこつと自分の道を進む」となお出馬を目指す野田聖子総務相も、仮想通貨業者が絡む金融庁情報漏えい問題の直撃で、戦う前に「瀕死の状況」に追い込まれた。

こうして「出る石破、出ない岸田、出たい野田という3本の杭」(自民長老)がそろって打たれた背景には、「非情な安倍流3選戦略がある」(自民長老)ことは間違いない。ただ、首相支持派の間にも「強権的手法が過ぎると、かえって造反が拡大するのでは」との不安は拭えない。

7月24日夕の岸田氏の総裁選不出馬会見を、党内各派は一様に「出馬をめぐる首相からの強い圧力に屈した」(竹下派)と受け止めた。会見で「いつまでも出るか出ないかはっきりしないということは、宏池会(岸田派)あるいは私自身としても適切ではない」と不出馬と首相支持を表明した岸田氏だが、前日23日の首相との極秘会談も明らかにしたことで、「首相に抑え込まれたことを言外に認めた格好」(派幹部)となったからだ。

岸田氏の「どうしたらいいの」が撤退に直結

出馬か不出馬かで迷う岸田氏にとっての最大の分岐点は、通常国会の大幅会期延長が決まる直前の6月18日夜の首相との密談だった。有名人が出入りする赤坂の日本料理店「古母里(こぼり)」での二人だけの2時間余の話し合いは「互いの腹の探り合いに終始した」(首相周辺)とされる。

過去一年間、首相と岸田氏は政局の節目ごとに密談を繰り返してきたが、双方が「差しの会談の内容は秘密」という政界のルールを守ってきた。しかし、18日の会談については、首相が20日夜の麻生太郎副総理兼財務相や二階俊博幹事長らとの会合や、その前後の親しいマスコミ関係者とのやり取りの中で、「それとなく漏らした」(関係者)たことで、一気に永田町全体に広がった。

新聞やテレビが報道したのは以下のやり取りで、岸田派の主戦論者は「これで終わった」(若手)と頭を抱えたとされる。

岸田氏「私はどうしたらいいのでしょう」

首相「出たら(人事などで)処遇できないよ」

首相はこうした岸田氏とのやり取りについて、周囲に「あの人(岸田氏)は何も自分で決められないんだから」と呆れた表情で話したとされる。

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