安倍流独裁、「杭はすべて打つ!」の制圧作戦 「出る杭」「出ない杭」「出たい杭」の造反は?

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これを受けた銀座のステーキ店での20日夜の会合で、麻生氏が「負けた派閥は、冷遇を覚悟すべきだ」と言い放ったことも一斉に報道され、岸田氏を追い詰めた。不出馬会見で岸田氏は「国会閉会を受けて改めて総理とお話しさせていただき、総理は私の考え方に丁寧に耳を傾けていただき、理解を示していただいた」とへりくだった言い回しで首相との会談を説明したうえで、「総理を中心にさまざまな課題に取り組むことに(私も)貢献していくのが適切な対応ではないか」と撤退を宣言した。

当然、記者団は「首相といつ、何を話したのか」と質したが、岸田氏は「(話したのは)昨日でした」と説明したが「具体的なことは控えたい」と口を濁した。ただ、岸田氏が明言した23日の首相との会談は、各メデイアの「首相動静」にも載っていなかった。しかも、菅義偉官房長官は25日の記者会見で事実関係を聞かれると「(首相に確かめたら)会っていないということだった」と不快感を露わにして否定した。

総裁選の行方も左右する「重要会談」なのに、一方が会談自体を否定するのは「極めて異例な事態」(自民幹部)だが、一部のメディアが「官房長官が会談を真っ向から否定」と簡単に報じただけだった。関係者は「双方が極秘会談で合意していたので、岸田氏が会見で明らかにしても官房長官はあえて否定してみせた」(政府筋)と解説するが、「一連のやり取りは首相が岸田氏を見限った証拠」(細田派幹部)との声も多く、首相サイドからの「今頃出ないといっても遅い」との嘲笑につながったとされる。

首相自ら石破氏に肩入れする組織を締め付け

こうした首相サイドの反応にすぐさま噛みついたのが石破氏だった。「ポスト安倍」の最大のライバルでもあった岸田氏の脱落に「ここに至った岸田さんの苦悩は、察するに余りある」とまずは同情してみせた。さらに、その2日後の26日の都内のパーティ―では「新聞報道でしか知らないが、『今さら何だ』『岸田派なんて人事で徹底的に干せ』と。何ですか、この自民党は。すべて自民党の同志ですよ。一部の人たちのために自民党はあるのではない」と聴衆を見回しながらこぶしを振り上げた。

石破氏にとっては、安倍1強による「独裁政治」を批判することで、対抗馬としての存在をアピールし、地方票の積み上げを狙うのが基本戦略だが、それに比例して首相サイドの石破氏への締め付けにも力が入る。首相は国会閉幕前から公務のかたわら、自民党を支持する各職域の全国組織トップらとの会談や、党地方県連の幹部たちとの会合を繰り返している。いずれも、6年前の総裁選で石破氏に肩入れしたとされる職域団体や地方県連だ。「まさに、狙い撃ちの党員票獲得作戦」で、石破陣営は「そこまでやるのか。まさに『出る杭は打たれる』だ」(幹部)と呆れ顔だ。

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