安倍流独裁、「杭はすべて打つ!」の制圧作戦 「出る杭」「出ない杭」「出たい杭」の造反は?

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一方、出馬を目指して「こつこつ推薦人集めを続けている」という野田氏も、「絶体絶命のピンチ」(周辺)に追い込まれている。国会閉幕直前の7月19日に朝日新聞が報じた「金融庁の情報漏洩」問題だ。具体的には野田氏の事務所が年明けに、無登録で仮想通貨交換業を行った疑いで金融庁から調査を受けていた企画会社の関係者を同席させて、金融庁の担当者に説明させていたという問題だ。ただ、これを取材していた朝日が金融庁に情報公開請求した内容が、請求者への開示前に総務省経由で野田氏に伝えられていたことが「政治的大問題」となった。

野田氏は情報公開制度の所管大臣で、請求内容の漏出防止を指導する総務省の最高責任者でもある。しかも野田氏自身が、金融庁から伝えられた話を第3者に漏らしていたことも発覚した。野田氏は「慎重さに欠けたと反省している」と謝罪に追い込まれたが、この疑惑には野田氏の夫が絡んでいたとされるため、朝日の報道を受けて『週刊文春』と『週刊新潮』の両誌がそろって大々的に報じる展開となった。このため、野田氏が釈明に追われる中、菅官房長官は「金融庁が開示請求者に関する情報を事前に伝えたことは極めて不適切だ」として関係職員を処分する方針を示した。

菅氏が発したサイン、野田氏は出馬も絶望的に

岸田氏の不出馬表明はこの騒動の最中だったが、野田氏は「これまで通り頑張る」と推薦人確保の動きを続ける一方で、8月上旬に総裁選への「政権構想」を盛り込んだ著書の出版を予定するなど、なお総裁選出馬への意欲を示している。ただ、一時は「野田氏の出馬を後押しするのでは」(自民幹部)とみられていた菅氏の厳しい態度を「出馬をあきらめろというサイン」(政府筋)と受け止める向きも多い。

さらに、一部メディアが実施した自民国会議員への個別調査でも総裁選での野田氏の支持者は「本人を含めて2人」という厳しい結果だけに、6年前の総裁選でひそかに野田氏を支援したとされる党長老らも「今回は出馬断念しかない」と肩をすくめる。

総裁選の実施要領を決める総裁選管理委員会は8月6日に初会合を開く。従来は7月末までの管理委開催が通例だったが、今回は「国会日程との絡みで遅らせた」(執行部)とされる。ただ、初会合では党内最長老の野田毅元建設相を委員長に互選するだけで、総裁選日程や党員資格拡大などの詳細はお盆明けの8月下旬の第2回会合となる見通しだ。

委員長になる予定の野田氏周辺も「総裁選の進め方も首相サイドの意向を忖度しなければならないのか」と苦笑する。これには党内から「中立公平なはずの管理委までが3選を前提に運営を強いられるのは1強体制の歪みの表れ」(ベテラン議員)との批判も広がる。

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