竹下派が自民総裁選を「自主投票」にしたワケ 3年後のキングメーカーを狙った戦略なのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

7日の自民党役員会では、吉田氏が首相らに「(総裁選に絡めて)人事で圧力を加えることはあってはならない」と直言し、首相は「(総裁選後は)挙党一致の体制を作ることが大事だ」と応じる一幕もあった。1強を誇る首相にとっても「参院は独立愚連隊」(党幹部)との苦手意識は消えない。前通常国会が首相らの意向に反して32日間という大幅延長となったのも、吉田氏ら参院幹部の主張に官邸側が押し切られた結果とされる。

その一方で、吉田氏はもともと首相とも親しく、今回の参院竹下派の動きには首相サイドも困惑を隠せなかった。ただ、早い段階から青木氏の石破氏支持は想定されていただけに、青木氏側近の吉田氏と、青木氏を後見人とする竹下氏の間で「事前調整があった」(竹下氏周辺)ことは否定できない。このため、自主投票に至る今回の動きは竹下、青木、吉田3氏による「仕組まれた芝居」との見方も少なくない。

竹下氏と首相は、盟友関係にあった故・竹下氏と故・安倍晋太郎元外相のそれぞれの秘書官として長い交友関係がある。竹下氏もかねてから「首相は親しい友人」と公言してきた。にもかかわらず、あえて石破氏支持での一本化をにじませて首相を揺さぶってみせたのは、「将来を見据えた竹下派の長期戦略」とみる向きもある。

竹下氏が「自前の総裁候補」と想定しているのは小渕優子元経済産業相とされる。故・小渕元首相の娘で、派内でも「姫」と呼ばれる優子氏は、早くから野田聖子総務相らと並ぶ「女性首相の有力候補」とされてきた。ただ、経産相という主要閣僚に抜擢された途端の政治資金をめぐるスキャンダル辞任で、その後は「閉門蟄居」を余儀なくされてきた。その小渕氏が「竹下派復活」を機に表舞台での活動を再開しつつある。

3年後の「ポスト安倍」でキングメーカーを狙う

首相が茂木氏や加藤勝信氏を要職に起用し続けたことで、党内では両氏を「竹下派の総理・総裁候補」とみる向きもあるが、「二人とも竹下派本流ではなく、派内ではまったく支持が広がらない」(派幹部)のが実態だ。だからこそ竹下氏も「小渕氏を将来の総理・総裁候補として育てる」(派長老)ことに力点を置くのだ。

3年後の「本物のポスト安倍」の総裁選は群雄割拠となることは間違いない。首相の超長期政権を支えることで党内ににらみを利かせている麻生太郎副総理兼財務相と二階俊博幹事長も、「3年後には、高齢による影響力低下は避けられない」(自民長老)とみられている。そこで名門派閥の領袖として竹下氏が狙うのは「新しいキングメーカーの座」(同)だ。だからこそ、党内から「今回の竹下派の自主投票は3年後への布石」との見方も出るのだ。

故・金丸信元副総裁とともに最大派閥を率いて「キングメーカー」の名をほしいままにした故・竹下元首相の口癖は「汗は自分でかきましょう、手柄は人にあげましょう」で、党内運営では「参議院を笑う者は参議院に泣く」だった。竹下氏の今回の動きは「兄の口癖に従った」(自民長老)ともみえる。このため永田町では、酒造会社だった竹下兄弟の生家の清酒銘柄の「我が道を行く」が、今後、竹下氏の行動原理になるとの見方も広がる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事