小泉進次郎氏は「石破支持」に踏み切れるのか 自民党総裁選の唯一の見どころだ
逆に、早い段階で小泉氏が首相支持に踏み切れば「総裁選自体が完全な消化試合となり、首相と石破氏の憲法や政治手法をめぐる論争の報道も盛り上がらない」(自民長老)というのが常識的な見方だ。その場合、小泉氏に対する国民の反応も「期待を裏切られた」「強いものにすり寄って保身を図った」など厳しいものとなることが予想される。
かねてから総裁選の対応について「じっくり考える」と繰り返す小泉氏だけに、ここにきて「あらかじめ支持候補は決めずに、告示後の政策論争をみて判断するのでは」(小泉氏周辺)との見方も広がる。小泉氏は若手を集めて「国会改革」を提言するなど「政治全体の改革」を求めている。このため、党や国会の運営手法や、財政再建と社会保障のあり方などで首相と石破氏の主張の違いが明確になれば、「自らの考えとの整合性を大義名分に支持を決める」(同)との筋書きだ。
石破氏は、首相の人事も含めた独裁的な政治手法を批判することで党内の反安倍勢力の結集を狙っており、小泉氏がその点を評価して石破氏支持を決断すればインパクトは大きいが、「首相の3選を覆すような流れにはならない」(自民幹部)のが実態だ。ただ、その場合は総裁選の結果にかかわらず、小泉氏の国民的人気がさらに加速する可能性がある。そうなれば、来年の統一地方選や参院選でも「最強の応援弁士」となる小泉氏に対し、首相や党執行部も人事で冷遇することはできなくなる。
その一方で、小泉氏が安倍外交への評価などで首相支持に回れば、「国民的には不興を買っても、政治的には“大人の判断”として一定の評価が得られる可能性もある」(自民長老)とされる。「まだ、37歳。ここで勝負する必要はない」(同)との見方からだ。首相陣営からも「若手代表として首相を支持すれば、総裁選後の改造人事で復興担当相に抜擢する案もある」(官邸筋)との声があがる。
もちろん、前回と同様に、総裁選への影響回避を理由として投開票後にどちらを支持したかを公表する選択肢もあるが、「“次の次”も視野に入れる自民党のホープとして、総裁選で事前の意思表示を避けるという無難な道を選べば、党内から『男らしくない』との批判が巻き起る」(小泉氏周辺)という事態ともなりかねない。
「3年後」をにらむ優等生の決断や如何に
そうした中、政界では小泉氏の父・純一郎元首相の影響にも注目する向きが多い。小泉親子の「仲の良さ」は政界でも有名で、機会さえあれば食事を共にし、温泉で背中を流し合うこともある、とされるからだ。もちろん、どちらも「政治家としての判断はまったく別」(純一郎氏)と口をそろえるが、これまでの政治行動をみる限りは「親子鷹の発想は同じ」(自民長老)の印象は拭えない。
政界では、「脱原発」を主張し安倍政権の現状を厳しく批判する父親の存在が、小泉氏の判断にも影響するとみられている。だからこそ、石破陣営は「そうなれば、小泉氏は最終的に石破氏支持を選ぶ」(石破派幹部)と読むのだが、永田町のプロの間では「あえて父親は反安倍、息子は親安倍というのが強かな小泉親子の戦略では」(有力政治評論家)との見方もある。
首相の体力と気力が続く限り、次回の総裁選は3年後の2021年だ。小泉氏は不惑の40歳となっている。小泉氏のかねてからの持論は「東京五輪・パラリンピックが終わると、日本は重大な岐路を迎える。その時どうするのかを考え行動するのが、我々若い政治家に与えられた使命」というものだ。聞きようによっては「次の次」の総裁選出馬宣言ともとれる。
3度目の挑戦で首相の座を奪取した父・純一郎氏は「一匹狼の勝負師」と呼ばれたが、息子・進次郎氏は「王道を歩む優等生」と見る向きが多い。党内の力関係や総裁選後の人事、さらには3年後や6年後の総裁選まで視野に入れる進次郎氏が、「多次元連立方程式」とみえる今回の総裁選への対応でどのような決断を下すのかが、「消化試合の唯一の見どころ」となることは間違いない。
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