木本:卵も面白いですね。
沼口:卵もいくつか持ってきましたが、これがナヌカザメの卵の殻です。殻の形が種類によってぜんぜん違うんです。
木本:これ本物ですか? 普通の魚卵とは思えません。
沼口:これがタンビコモリザメという外国のサメです。
木本:これを産み落とすんですね、1つの殻には1匹しかいない。
沼口:ここに黄身があって、どんどん発生して、育ったら手の平サイズでポンと出てくる。それが魚とサメとの違いです。マンボウは1回の産卵で8000万個ほど(諸説あります)の卵を産みます。たくさん産んでそのうち1つが大きくなれば種の保存はできるという戦略です。サメはネコザメならば1シーズンで12個くらい産みます。
木本:それほど敵に襲われにくいんですね。
沼口:まるで、メカブそっくりでしょう。こういう形状の卵殻を産んだ親のネコザメは、海藻の生えた岩場に、メカブそっくりの卵殻をくわえて、なるべく安全と思われるところに運んだりします。カモフラージュ効果はもちろん、流されにくいとか、海藻に引っかかりやすくとか、よりよく生き残るためにこういう形になったんでしょう。ナヌカザメの卵はツルが付いていて、それが岩に巻きついて流されないようにしています。
木本:海藻に引っ掛けて、形も似せて紛れさせるんですね。胎生のサメの特徴も教えてください。
お腹の中で共食いするサメも
沼口:胎生のサメもバリエーションがあります。母ザメのお腹の中で孵化して、自分の卵黄だけで成長する「卵黄依存型」と、お母さんから栄養補給を受ける「母体依存型」に分かれます。後者にはさらに3つバリエーションがあって、母ザメがエサとして未受精の卵を提供する「卵食型」。子宮ミルクという栄養を供給する「子宮ミルク型」。そして「へその緒」を介して栄養を与える「胎盤型」です。「卵食型」には孵化した子ザメ同士が母ザメのお腹の中で共食いするパターンもあります。
木本:受精する前の卵子を食べさせるなんて、すごいシステムですね。サメの生殖ひとつでも、これだけバリエーションがある。沼口さんの研究テーマは無限ですね。
(構成:高杉公秀)
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