誤解され続けているサメの知られざる正体

人食いザメなんて存在しません

沼口:南の島に住んでみたいという願望もあって、小笠原の父島に行ったらアオザメを獲っている漁師さんに偶然お会いしたんです。

沼口麻子(ぬまぐち あさこ)/1980年、東京都生まれ。東海大学海洋学部卒業後、同大学院海洋学研究科水産学専攻修士課程修了。IT企業のプログラマーとして8年間の会社員生活を送ったのち、世界で唯一のサメジャーナリストとして独立。静岡県焼津市をベースに、サメの情報を発信し続けている。専門学校の講師、雑誌連載、ブログなどで「隠れサメ好き」の発掘に余念がない。2018年5月『ほぼ命がけサメ図鑑』を上梓(撮影:尾形文繁)

小笠原のサメに限定すると、関連研究論文もあまりなくて、ある意味、何をテーマに論文を書いてもオッケーな状態でした。先生からも「小笠原周辺にどんなサメがいるかは誰も知らないから調べてみれば」とアドバイスを受けました。移住して、毎日漁港でサメをもらいに行きました。

漁師にとってはマグロなどの食用として売れる魚だけが価値があって、サメは漁獲されたとしても、船に揚げるまでに暴れるなどして、漁具を壊したり、ケガしたりという嫌われ者。ほとんどの人は針にかかっても水揚げせずに海にリリースをしていましたが、たまたま協力してくれる漁師さんと出会ったおかげで、サメの新たなサンプリング場所として開拓できました。

木本:いい出会いもあったと。

沼口:毎日水揚げされたサメを取りに行ってサンプリングしていくうちに、ますますハマっていったんです。

木本:世の中の研究者は、特殊な能力がもともとあったと思ってしまうんですが、沼口さんはそうじゃないですね。サメにどんどんハマっていくほど研究対象についての無限の可能性を知ることができ、大学で論文を書くことができた。著書でいちばん印象に残ったのが「人食いザメは、存在しません。」というキャッチでした。

サメは世界に500種類以上

沼口:サメといえば、映画『ジョーズ』の印象が強烈ですが、毎年、夏になると「海水浴場にサメが現れて遊泳禁止」のニュースがつきものです。皆、サメを怖がっていて、「サメ=人を食べる」と思っています。

でもサメは500種類以上いて、ホホジロザメのような、映画『ジョーズ』のモデルになったのもいれば、手の平サイズのツラナガコビトザメまで多様です。哺乳類でいえばライオンもいれば、ハツカネズミもいるようなものなんですけど……。

木本:手の平サイズで飼ってみたくなるサメもいれば、「うわあサメだ」という大物もいる。大きさで最大はどんなサメですか。

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