近未来の感染症流行を予測できる数式の衝撃 北大教授「数理モデルで感染症を食い止める」

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予防接種に対する示唆
2012年から2013年にかけて大規模な風疹の流行がみられた。このとき、予防接種の集団免疫割合を算出したうえで、優先的に予防接種を接種すべきターゲットを特定できる数理モデルを構築し、実際の流行動態を分析してみたところ、30代から40代男性の発症率が顕著であることがわかった。このようにして数理モデルを用いることにより、優先的に接種すべき対象を明確にするとともに、それに必要となる予算規模などを検討するためのエビデンスを提供することができる。

30〜50歳代の男性に優先的に予防接種すべきこと、そのための予算がどの程度必要か、それを国立感染症研究所の本研究の統括責任者に伝えた。

そしてこの話はさらに前進する。予算を得て、どのような予防接種プログラムによって目標を達成するのか、その一助とすべく新しいプロジェクトを立ち上げて議論を進めているという。

しかし、日本の徒弟制度から離れて海外に長期滞在していた西浦教授にとって、日本の政策形成の現場に関わるのはそう簡単ではなかった。

どんな研究をしていようが、どんな経験を積んでいようが、それだけでは厚生労働省などに行っても、まじめに取り合ってもらえない。国際的に認められた業績をしっかりと積み上げることがどうしても必要だった。それができれば、自分の言うことも無視されなくなると考えた。

それが海外での研究が長引いた理由でもあった。

新型インフルでパニックに陥った日本

ある時気がついた。

パンデミックに際して誰に優先的にワクチン接種をするかというポジションペーパーをWHOが出すと、日本の厚労省はそれを和訳して使っていた。実は「そのペーパーの作成に携わっていたのは自分たちだった」(西浦教授)という。WHOなどを通して情報を入れれば、たちまち日本政府の扱いが変わるということを実感したきっかけである。

2009年に新型インフルエンザH1N1が大流行したとき、オランダから日本に出張してきた西浦氏が見たのは、日本の大パニックだった。

実はこのとき、日本政府はパンデミックに備えて、かなり周到なマニュアルを用意していた。それに従って、国際空港に検疫の職員に加えて防衛省や国立病院機構の医師・看護師を動員して機内検疫を実施した。

メキシコから始まって北米全域で流行していたため、北米から到着した旅客機にポータブルサーモスキャナーを持ち込んで乗客の熱を測る。マニュアル通りの水際作戦である。

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