GAFAの経営戦略、実は「古くさい」ものばかり 「覇権の4強」を経営戦略から読み解く

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これは何もGAFAがそうなると言っているわけではありません。ダイナマイトの開発も、核兵器の開発も、人類は悲劇を生み出そうとして作り上げたわけではないのです。少なくとも私はそう信じています。直接かかわった研究者がやっていたことは人間社会に大きな可能性を与えましたし、彼らは人類のために開発に取り組んでいたはずです。しかし、それがもたらしたものは、いずれも大きな表裏一体の功罪がありました。

GAFAの経営者たちが世界の方向性を決めている!?

――GAFAの存在は、いわば国家やその国の行政を代替しえるほどの力を持っていると?

そうかもしれません。GAFAという存在は、私たちが気づかない間にある意味では国家を超えてしまった側面もあるでしょう。全世界的な市場をコントロールしつつあるのはアマゾン、私たちの考え方をコントロールしようとしているのはグーグル、そして人々のつながりをコントロールしようとしているのがフェイスブックです。アップルはほかの3社に比較すると限られた影響力のようにも思えますが、圧倒的な力を保持している企業であることは間違いありません。

スコット・ギャロウェイ氏も『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』で触れていますが、GAFAの成功の要因の1つは、最初の時点で国際化を果たしたことがかなり大きいと思います。アメリカのドメスティックなサービスで留まろうとしなかった。短期的な利益を多少犠牲にしてでも、新しく、需要のあるはずのところに投資をし続けたことが4社には共通しています。グーグルは全世界の主要なマーケットに支社を置いて営業して、データを収集し、あるべき方向へと最適化していきました。フェイスブックも、だんだん日本人にとって使いやすいように変わってきています。こうした取り組みの結果、この4社は世界各地の多くの市場で一定のプレゼンスを発揮しており、単一の国家の枠組みに支配されえない可能性のある経済圏の構築に成功しています。

これはGAFAに限った話ではないのですが、グローバルに展開したことで自社に有利な事業環境を創出できているのも注目すべき点です。たとえばGAFAにとって個人情報の取り締まりが問題になるなら、別の国に行くという選択肢がある。税金もしかりです。単一国家の枠組みに支配されないほどの世界的なプレゼンスを持ちながら、そのプレゼンスを背景として生み出されるキャッシュを有効に活用し、世界各地の利害関係者との間に有利な関係性を構築しようとしています。

かつて、アマゾンが適切な金額の法人税を払っていないのではないかとして、日本の国税庁が追徴課税を請求しようとしたことがありました。しかしアマゾンは納税はアメリカで行っていると回答し、アメリカと日本の2カ国協議の結果、追徴課税の議論は立ち消えになりました。同じようなことが、アイルランドやスイスなど、世界中で起きています。国家間のパワーバランスも彼らは利用することができているともいえるかもしれません。これも世界最高峰の超一流のアドバイザーがついているからできることなのでしょう。

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