カリフォルニアでみた、さまざまな“家族”
家族でのカリフォルニア生活を通じて夫婦が感じたのは、多様性の価値だった。
「息子が2歳から通った保育園には、いろんな人がいたので、子ども自身が肌の色が白いとか黒いとか、気にすることもなかったです」(実苗さん)。「スタンフォードにはお父さんが育児中という人もいた。子どもたちも、人と違うことを恐れないでほしい」(泰三さん)。
日本では珍しがられる父親が主に育児を担う家族形態も、アメリカのリベラルな大学町では、まったく違和感なく受け入れられた。そもそも多様な人種が集まっている。見た目が違うのが当たり前だから、夫婦どちらが稼ぎ、どちらが育てるか、家族によって違うのも当たり前――。
文部科学省はグローバル化と教育について考える際「文化の多様性を尊重し受け入れる寛容な姿勢を育む」ことを重視している(参考リンク)。堀込さん夫妻は、ほかと違う行動・選択を当たり前のように取ってきたから、多様性を後から学ぶ必要はなかった。
帰国後も、自然に多様性を受け入れる姿勢で暮らし、子どもたちを育ててきた。今、住んでいるのは、都内でも有数のお受験が盛んな地域。小学校1年生から、中学受験を考えて動き始めるのが当たり前と考える人も少なくないが、「小学校はやはり公立に通ってほしい。そこでいろいろな人と触れ合ってほしい」と実苗さんは考える。中学受験については「本人がやりたいならいいのではないか」というスタンスだ。
教育について、実苗さんは自分なりの考えを持ちつつ、違う選択をする人も否定しない。「子育てに正解はないし、受験産業がビジネスとして成り立つのもわかる。本人がいいのなら、いいのではないか」。
このような考えを持つのは、実苗さんの職業柄もある。「遺伝学を専門にしていて“多様性”という概念が当たり前のことなので、あまり人を変えようと思わないのかもしれません」。
ちなみにアメリカで仕事をした経験から英語は「働くために必要」で、自分は年2回は英語で学会発表するけれど、「語学のためだけに何か特別なことをする、という意識はない」という。息子たちに関して言えば「本人が望むなら高校から留学という選択肢もあっていい」と考えるが、「いちばん大切なのは自己肯定感だと思います」。
裸足で伸び伸びと走り回る息子たちを見守りつつ、「たとえば、こういうこと(裸足)は、私がメインで育児をしていたら、させませんが、今は夫に任せているので、あえて口は出しません」と説明してくれた。
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