そう。堀込兄弟は夏休みを丸々、南の島で過ごす。しかも祖父母の家へ遊びに行くのではなく、泰三さん自ら計画し、長期滞在を実行するのだ。母親の実苗さんも夏休みを取って、この男子旅に1週間ほど合流する。
朝から晩までたっぷり遊び、いつもと違うものを見て過ごすと、子どもの感性は磨かれる。昨年の沖縄旅行中、泰三さんは子どもに頼まれて、魚の図鑑を買った。「実物を見た後だと、より興味が湧くようです」。生き物好きの峻平くんと耕平くん兄弟は、昆虫や動物の図鑑もお気に入りだ。
長旅にはおカネがかかる。だから3人は、節約のために安宿を転々とする。食事も、できるかぎり自炊だ。このスタイルはすっかり定着していて、峻平くんからは「今日の宿決まってるの?」なんて質問が出るほど。「子どもの頃からこういう経験をすることで、どんな状況にも対応できる臨機応変さが身に付くと思います」。
家事育児は夫がメイン!
息子を自然の中で育てるのは確かに魅力的だ。けれども1カ月も夏休みを取れる父親の泰三さんは、何をしているの?と思う人もいるだろう。
泰三さんの仕事はフリーランスの翻訳家兼ライター。夏休み旅行の間、昼間は子どもたちと遊び、夜は翻訳や執筆にいそしむという生活を送った。泰三さんのFacebookには「旅行の記録をブログに残しておこうと思ったけれど、昼は遊びに、夜は仕事に忙しく、まったくブログは書けていませんが、楽しくやっております」と書かれていた。この記述に添えて、海に面した絶景のコテージでくつろぐ子どもたちの写真がある。
自然体なのは、育児だけでなく夫婦の関係性も同様。高校の同級生同士だった堀込さん夫妻の特徴は「夫が育児をメインでやっている」(妻の実苗さん)こと。もともと大手自動車メーカーの研究開発部門で働いていた泰三さんは、峻平くんが生まれたときに育児休業を取得。その後、会社を辞めて主夫を経験した後、今のようにフリーランスとして働くようになった。
泰三さんが主夫になったきっかけは、実苗さんの海外赴任だ。博士研究員としてスタンフォード大学のあるアメリカ・カリフォルニアに行くことになった。当時、会社員だった泰三さんは、迷わず育児休業を取得して家族そろって渡米することにした。ところが実苗さんのアメリカ滞在が当初予定より長引き、泰三さんの育休期間が終わってしまった。
仕方なく、いったんは帰国し仕事に復帰したものの、家族と離れて暮らす寂しさに耐えかねて退職を決意。主夫となって再渡米した。このあたりの経緯は泰三さんの著書『子育て主夫青春物語』(言視舎)に詳しく書かれている。
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