50歳で出世できず、憂鬱な人に教えたい心得 会社だけが人生じゃない、頭を切り替えよう

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大学を卒業し、いったんは商社に入社したが、マスコミへの夢断ちがたく、数年後、大手新聞社に入社した。

経済分野が専門だが、教育分野にも関心があり、活躍した。順調に出世し、経済部長になった。

「役員も近いですね」

私が冷やかしぎみに言うと、まじめな顔をして「頑張ります」と答えたこともあった。出世したいという希望を持っていたのだ。「生涯一記者」を希望していたわけではなかったのかもしれない。

ところが意に反して役職を外され、編集委員になった。50歳を過ぎたため、ポストオフされてしまったのだ。

「もうちょっと上にいけると思ったのですが」

彼は落ち込んだ。

やりたいことをやったらいい

私は彼を飲みに誘った。そして次のように言った。

「よかったじゃないか。割り切れよ。部長職を外れたらやりたいことをやったらいいじゃないか。これで部下の管理からも上司の御守りからも解放されるわけだ。新聞の売り上げも新聞社の業績も気にしなくていい。

それでいてちゃんと給料はくれる。出張費も出る。必要な雑誌などは購入してくれる。会社の金で情報も入手できるわけだ。秘書もマンツーマンというわけじゃないけど、編集委員を担当する秘書がいる。こんなポストはうらやましいよ。

僕なんか、全部、自分でやっているんだよ。それでいて収入は安定しない。僕が代わりたいくらいだ」

彼は、「そうですかぁ」と懐疑的だった。部長というポスト、そしてその上の役員のポストに未練たらたらだったのだ。

ところがしばらくして彼に会うと、にこにこしている。険しかった表情も和らいでいるような気がする。

「どう、その後は?」と私。

「江上さんに言われたことで、頭を切り替えたんです。そうしたらすばらしい未来が見えてきました」

彼はうれしそうに言う。

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