50歳で出世できず、憂鬱な人に教えたい心得 会社だけが人生じゃない、頭を切り替えよう

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

あなたの思いは正しい。現場で若手として働いているときは極めて優秀なのに、課長、部長、役員と出世していくにつれて会社員は無能になっていく。なぜなら無能にならなければ、会社では出世できないからだ。あまりに有能だと上司は嫉妬し、間違いなく潰しにかかる。「出る杭を打つ」のだ。ある経営者が言ったことを思い出す。

「経営者は良きナンバー2を得ることが最も重要なのです。しかし経営者は良きナンバー2より、自分に忠実な部下を大事にしがちです。そうして会社はいつの間にか衰退します」

「できる奴」は出世できない。それは上司(経営者)の嫉妬を招くからだ。この嫉妬をかいくぐるようなズル賢さが出世のためには必要なのだ。

こんな実例は戦国時代から山ほどある。現在でも「中興の祖」と言われるような実力経営者が80歳以上になっても君臨し、次々と社長の首を切っている会社は多い。こんな会社では、誰もが実力経営者の顔色を見て戦々兢々としている。このような状態では、大企業の場合はすぐには業績悪化は目立たないが、徐々に衰退していく。

最後に笑うのは誰か

大半の人は「できる奴」として入社しても、いつの間にかその他大勢になって出世から見放されてしまう。同期100人が入社しても、部長になれるのは10人もいないだろう。ましてや役員となると数人だ。しかし、引け目に感じたり、悔しがったりする必要はない。

昔の話で恐縮だが、銀行の人事部に勤めていた時代、出世に見放された行員たちを集めて研修したことがある。彼らを「活性化」させよというのが経営命題だった。私は勇んで彼らを叱咤激励した。ところが彼らの生活の様子を聞いているうちに、私のトーンは徐々に弱くなってきた。

『会社人生、五十路の壁 サラリーマンの分岐点』(PHP新書)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

というのも、彼らの家庭生活が非常に充実していることに気づいたのだ。家庭を大事にし、子どもと一緒に遊ぶのは当然。少年野球チームのコーチをしたり、地域ボランティアのリーダーをしたりしている。ひるがえって私自身のことを考えた。

仕事のみで家庭を顧みず、子どもとも遊ばず、地域とのつながりはまったくない。幸せなのは私なのか、彼らなのか、深く考えさせられたのだ。当時の私は妻から「そんなに働いても、のれん分けをしてもらえるわけじゃないのよ」と何度も言われた。「健康を害したら捨てられるだけよ」とも……。

「出世=できる奴」でも「出世=幸せ」でもない。これは間違いない。会社だけが人生ではない。むしろ、会社を退職した後の人生は長い。その長い人生を充実して過ごせるかどうかが、最後に笑う極め手になると思う。仕事一筋で燃え尽きるより、彼らのように家族や地域との絆を大切にしたほうが、最後に笑うのではないだろうか。

江上 剛 作家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

えがみ ごう / Go Egami

1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1977年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。人事、広報などを経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。2003年、49歳で同行を退職し、執筆生活に入る。その後、日本振興銀行の社長に就任、破綻処理など波乱万丈な50代を過ごす。現在は作家、コメンテーターとしても活躍。著書に『失格社員』(新潮文庫)、『ラストチャンス 再生請負人』(講談社文庫)、『我、弁明せず』『翼、ふたたび』『怪物商人』(以上、PHP文芸文庫)など多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事