りそな公的資金返済で浮上する再編の観測

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ポスト細谷も課題

これとは別に、約3000億円規模とされる別の社債型優先株の引受先では、別の観測が浮上した。りそなの前身の一つである旧協和銀行の大株主だった第一生命保険が引き受けるのでは、というシナリオだ。5月に各紙のインタビューで、細谷英二会長が、保険や証券など銀行以外の金融機関との資本提携を検討していると話し、第一生命のりそな獲得説を補強した。

第一生命にしてみると、りそなとの提携は今年12月に全面解禁される保険商品の銀行窓口での販売に合わせ、販売チャネルを拡充できるメリットがある。ただ、りそなが昨年設定した優先株の発行枠は議決権のない社債型しか残っていない。資本提携というより、第一生命の純投資の一環と位置づけられるだろう。

今後最大の焦点は3月にりそなが申請した国が保有する普通株(564万株、簿価2937億円)売り出しの買い手がどこになるかだ。優先株発行で一時ストップしているが、首都圏に地盤を置く傘下の埼玉りそな銀行に関心を寄せる金融機関は多いようだ。

公的資金返済に一定のメドをつけつつあるとはいえ、りそな自身にも課題が残る。07年3月期は税効果会計の影響で連結純利益は6648億円と大幅増益になったが、08年3月期は税効果要因が消え大幅減益となる。住宅ローンや投信販売など、りそなが得意とする分野が伸び悩む。

細谷会長は、就任5年目を迎えており、”ポスト細谷”をにらんだ体制構築が急務だ。6月末で、持ち株会社の新社長に檜垣誠司取締役を昇格させ、昨年就任したばかりの持ち株会社の水田廣行社長はわずか1年でりそな銀行社長に転出する。檜垣氏は「役割は変わっていくもの」と説明するが、あまりに唐突な幹部の交代に細谷会長と水田社長の不仲説もくすぶる。

個人向け業務に強いりそなのネットワークや資産はそれなりに魅力だ。りそなをめぐって、金融各社も神経をとがらせる状況が続きそうだ。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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