豪雨被災地「アレルギー患者」が直面する危機 命にも関わることだが後回しにされている
避難所担当の職員は「これを見て当事者に電話をしてもらうしかない。特に避難所でアレルギーがあるか声を掛けたり、食事どきにアレルギー食を選んでもらったりする対応はしていない」と話す。
そこからまた車で10分ほど離れた南方コミュニティセンターに市社協が設けた災害ボランティアセンターでも、「今はアレルギーのことまでは……」と対応しきれていなかった。
「やはり、そんなものなんですね……」。状況を知った沖さんらは肩を落とした。
命にも直結する問題
今回の災害で、特に被害が大きく頻繁に報道されているのは広島市や呉市などの広島県西部と、「真備町」を中心とした岡山県倉敷市。その間に挟まれ、周辺の交通が麻痺していた広島県東部の三原市は、支援の手が行き届いていない印象を受ける。
しかし、市や市社協などの対応は、どの地域でも似たり寄ったりであろう。行政にとって、絶対数が少なく、目に見えにくいアレルギー患者への対応はどうしても後回しになりがちだ。患者によって食べられないものが異なり、対応を間違えれば責任問題にもなりかねない。だから「アレルギーどころでは……」と後ろ向きになるのは仕方ないとも言える。
ただ、持病の薬ならある程度の量を保管して、まとめて持ち歩けるかもしれないのに対し、アレルギーは日々の食の問題。長期に及ぶ避難生活は患者にじわじわと負担をかけ、それが命にも直結する。
前身の団体を含めて約30年間活動している名古屋市の認定NPO法人「アレルギー支援ネットワーク(支援ネット)」は、2011年の東日本大震災時に東北各地のアレルギー患者向けに支援を展開。当初は交通や通信の寸断で患者からのSOSをうまくキャッチできなかったが、メディアに対する広報の強化や避難所でのポスター張りなどの周知を続けて、患者の声を拾い上げた。
前年に東海地震の発生を想定して「バイクボランティア」に遠方の患者へ備蓄食を届けてもらう訓練をしていたこともあり、東北でも内陸の拠点から沿岸の被災地へ物資を届ける態勢はつくれた。
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