「食物アレルギー」のショックはなぜ怖いのか 乳幼児は牛乳、成人はエビ・カニなどで多い
今年3月。ファイザー社の「エピペン」という薬の不具合が報道された(自主回収され日本では事故報告なし)。エピペンとは、食物アレルギーから生じる「アナフィラキシーショック」(急激な全身のショック症状)を緩和するため、アドレナリンを自己注射する薬だ。
現在、日本人の2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹(かか)っているとされ、アレルギーは“国民病”といえる。集中力の低下を招くスギ花粉症、発作で気道が塞がれば死にも至る気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎――などもある。が、急性のショックを起こすおそれもある食物アレルギーは、より深刻かもしれない。
文部科学省などが、全国の公立学校(小中高)で2004年(対象1200万人)と2013年(同、少子化により900万人)の2回実施した調査では、食物アレルギーがあると申告した子どもが2.6%から4.5%に増加。アナフィラキシーショックを起こしたことがある子どもも0.14%から0.48%へと増えている。
戦後にアレルギー疾患が増えた理由
アレルギーの歴史は古く、昔からハチやイソギンチャクの毒によるアレルギーは知られていた。しかし、いわゆるアレルギー疾患が問題になってきたのは、第2次世界大戦後。その背景として、“衛生仮説”という考えが専門家の間でも支持されている。
かつて人類は細菌やウイルスなどの病原体による感染症(伝染病)で命を落としていた。戦後、欧米や日本では衛生状態が大きく改善し、ワクチンなどの予防手段も進んで、感染症やそれによる死者は激減。人間の体には、生体を外敵から守るための免疫系(システム)が備わっているが、病原体という“攻撃対象”を失い、本来攻撃する必要のない物質を、アレルゲン(アレルギーの原因物質)として過剰な反応を起こすようになった。
戦後のアレルギー“第1世代”は、気管支ぜんそくや花粉症を発症する人が多かった。これには大気汚染などの公害や人工的なスギの植林も影響している。そうした親世代の子どもたち=“第2世代”に、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の子が増えている。ぜんそくの新規発症者の増加は頭打ちになっており、食物アレルギーもその道をたどるはずだが、前述の文科省調査ではなお増えており、アナフィラキシーを起こすなど、一部は重症化している可能性もある。
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