JDI新社長が語る「脱スマホ依存」の行く末 経営再建のカギは中国向け車載パネルの育成

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――有機ELの生産を取り止めることもありえるのでしょうか。

今のところそのつもりはない。有機ELの生産技術は、大きく分けて蒸着方式と印刷方式の2種類がある。JDIが持っているのは、蒸着方式の技術だ。サムスンも蒸着方式の技術を持っているが、ご理解いただきたいのは、当社とサムスンの製造プロセスは大きく異なるということだ。JDIは、蒸着方式の生産で必要な真空の生産設備が小さくて済むため、コスト圧縮や生産性向上が見込める。サムスンが席巻する市場でも、十分優位性を出せるはずだ。

また、よく誤解されるが、JOLEDの子会社化をやめるからといって、JDIが同社の製品を扱えなくなるわけではない。むしろ、設計、開発、販売面でこれまで以上に協業していく予定だ。特に販売面は、JDIの営業部隊が主に担う。JOLEDの有機ELは他社がまだ実用化できていない印刷方式を採用しており、蒸着方式では難しい10インチ以上の中型のパネル生産に適している。医療、車載、モニター、パソコン向けなど、さまざまな用途に対応できる。

再建のカギを握る車載事業

――JOLEDの中型パネルは、今後市場が拡大していく車載向けでも期待が持てそうです。JDIの東入來信博会長は、スマホ依存の体質から脱却すべく、スマホ以外の事業の売上高を現状の2割から45%へと引き上げることを掲げました。

月﨑義幸(つきざき・よしゆき)/1959年生まれ。1984年に日本大学大学院理工学研究科修了、日立製作所入社。2014年にジャパンディスプレイ執行役員。車載インダストリアルカンパニー社長を経て、2018年6月から現職(撮影:田所千代美)

お約束はできないが、2021~2022年くらいには達成したい。足元でも、非モバイル分野は安定的に増えている。特に柱となるのが、世界シェア約20%と首位の車載向けパネルだ。先日もラインが不足するという問題が起きたほど、フル生産が続いている。昨年には石川のスマホ向けパネルのラインを車載用に転換するなど、増産体制も敷いている。

現在当社のシェアが最も高いのは欧州市場だが、食いつきがよいのは中国だ。車内にパネルを複数搭載した先進的な自動車がどんどん出てきている。ただ、他国が納入までに3年かけるところを中国は1年程度と、リードタイムが短く、そのスピードについていくのは大変だ。そこで当社は2年前から中国での営業部隊を強化し、需要を取りこぼさないようにしている。車載事業の売上高は2017年度に1000億円の大台を超えた。2022年度には1900億円を目指す。

――産業革新機構とは、今後どのような関係を築いていきますか? 先日、JDIの工場を200億円で購入したことに対し、「企業救済ではないか」との批判もありました。

引き続きサポートをしていただく関係性であることには変わりない。今後も資金調達などでお世話になる可能性については明言できないが、ご支援いただいていることはとても心強い。引き続きご支援いただけると思っている。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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