ニューズピックス、「米国120億円買収」の野心 前人未到の「課金メディア」をどう作るのか
日本で一定の成功を見た事業モデルと、英語圏を中心に影響力を持つ新興メディアの編集力を掛け合わせ、ニューズピックスは米国攻略に本腰を入れる。だが、この先の道のりは決して甘くない。そもそも米国では、2000年代以降に発足した新興ネットメディアで課金モデルを成功させている例がないからだ。
「課金モデルを実現するには時間がかかる。新興メディアには資本にベンチャーキャピタル(VC)が入っている場合が多い。すべてのVCがそうではないが、短期的な収益を重視すると、広告モデルに注力するほうが合理的という判断になりがち。結果として、これまではどの会社も課金モデルの確立に本気で挑戦し切れていなかった」(梅田氏)。
広告モデルの限界が露呈し始めている
近年は広告モデルの無料メディアが台頭した米国市場だが、それらを取り巻く環境が変容しつつあるのも事実だ。今年1月には、世界最大のSNS・フェイスブックがタイムラインの表示アルゴリズムを変更し、メディアや企業による投稿が以前より拡散されにくい状態になった。これにより閲覧数を3割以上減らした媒体もある。またクオーツの昨年度決算のように、広告主の事情で収益が上下するリスクも大きい。
こうした無料メディアの中には、米バズフィードなど、経営不振から大規模なリストラに乗り出すケースも出ている。「自分たちで直接サービスを届け、ビジネスをコントロールできる体制を築けないメディアは、今後生き残れなくなる」(梅田氏)。
ニューズピックスは2023年の目標として、米国、日本にとどまらず、全世界で有料会員数100万人(現在は7万人)という高い野望を掲げる。この達成に向け、米国事業は向こう2年間を課金ビジネスの確立や積極的なマーケティングに先行投資を行う期間と位置づけ、2021年の収益化を狙う。今年度の業績計画も、クオーツののれん償却や買収に伴う一時的コストを加味し、営業利益以下を下方修正している。ユーザベースの上場から3期目、同社の大勝負が始まった。
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