ニューズピックス、「米国120億円買収」の野心 前人未到の「課金メディア」をどう作るのか

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ニューズピックスのアプリ画面。日本版(左側2つ)と米国版(右)ではデザインが大きく異なる(日本版写真:アプリ画面をキャプチャ、米国版写真:ユーザベース)

「5年後、世界で最も影響力のある経済メディアになるために、最短距離の戦略を取る。今回の買収の狙いはこれに尽きる」。ユーザベースの梅田優祐社長兼共同経営者はそう力を込めた。

SNS型の経済メディア「NewsPicks(ニューズピックス)」を展開するユーザベースは7月2日、主にモバイル向けに独自のビジネス記事を提供する米ネットメディア「Quartz(クオーツ)」の買収を発表した。

買収価格はベースとなる7500万ドル(約82.5億円)に、売上高や有料会員数など目標達成率に応じて支払われる“分割払い”の分を加え、最大で1億1000万ドル(約121億円)に上る。全社の年間売上高が67億円、営業利益が8億円(2018年12月期の期初計画)というユーザベースにとっては、かなり規模の大きい買収だ。

SNS機能が受け、有料課金も成長

ニューズピックスがサービスを開始したのは2013年。多種多様な媒体のニュースを1つのアプリからまとめて読めるほか、一般読者や専門知識を持つ「プロピッカー」が記事に寄せるコメントを併せて読めたり、それに対して「いいね」などで自身の意見を表明できたりするSNS機能が受け、利用者数を伸ばしてきた。

ユーザベースはクオーツ買収を発表した7月2日に記者会見を実施。梅田優祐社長(中央)のほか、事業開発担当執行役員の太田智之氏(右)、ニューズピックス取締役の佐々木紀彦氏(左)が登壇した(記者撮影)

2014年には有料課金プランを導入し、社内編集部によるオリジナル記事の配信も始めた。足元の有料会員数は7万人。その後も広告収入と課金収入の両軸で売上高を拡大させ、昨年度はニューズピックス単体で初めて営業黒字を達成した。

日本での事業を軌道に乗せるのと並行し、ニューズピックスは米国展開に乗り出している。2017年5月に米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」を展開する米ダウ・ジョーンズと合弁会社を設立。8月からは創業者の梅田氏が米国事業に専念すべくニューヨークに拠点を移し、11月には米国版のニューズピックスアプリを投入した。1日あたりのアプリ訪問者数や継続率など、各種の指標が日本事業の立ち上げ期を超える成長を示しており、「これはいける、という自信の源になった」(梅田氏)。

現在、米国版のニューズピックスではオリジナル記事を提供しておらず、課金プランもない。この“最後のピース”を埋め、本格的な収益化を目指すことこそが、今回の買収の主目的だ。

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