ニューズピックス、「米国120億円買収」の野心 前人未到の「課金メディア」をどう作るのか

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クオーツは2012年の創業以来、新興経済メディアとして知名度を高めてきた。新聞、テレビ、雑誌など、有力伝統メディア出身のジャーナリストを多く抱え、独自制作したコンテンツを無料で配信している。モバイル端末で読むことを前提としたデザイン作りも強みの一つだ。月間の読者数は2000万人に上り、そのうち4割は米国外からの訪問者だという。

ただ、広告収入一本足というクオーツの事業モデルは、大型広告主の業界動向など外部環境の影響を受けやすい。2017年は売上高が初めて前年を割った。課金プランの導入や事業モデルの転換を模索していた矢先に、提携話を持ちかけたのが梅田氏だった。現地化した編集機能を必要としていたニューズピックスと、課金のノウハウを得たかったクオーツ。両社の思惑は一致した。

クオーツの買収交渉は梅田優祐社長が主導した(記者撮影)

具体的な交渉は昨年11月に始まった。当初は有料課金事業に特化した合弁会社を設立する方向性だったものの、話が進むにつれ、「クオーツのメンバーが丸ごとうちに入る形がベストだろうという合意に至った」(梅田氏)。クオーツ側も今回の買収に当たり、「梅田氏を知るようになるにつれ、彼とその同僚が本物の起業家であり、私たちが掲げる高い目標に合致する人物だとわかった」と声明を出している。

米国でも有料会員を早期に拡大へ

今後、米国版ニューズピックスはダウ・ジョーンズとの提携関係を維持しつつ、独自コンテンツにかかわる責務をクオーツが担うという経営体制となる。まずは既存のクオーツの無料記事を取り込むことで読者層をさらに広げつつ、日本同様にSNS機能を駆使し毎日の訪問を促進していく。

今秋には有料記事を制作する専門チームを立ち上げ、課金ビジネスに参入する。さらに日本事業の「アカデミア会員」(月額5000円、書籍・雑誌の購読やリアルイベントへの参加が可能)にあたる上位の有料プログラムも早期に投入する方針。クオーツがすでに確立している広告ビジネスと両輪で成長させていくシナリオだ。

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