キャプテン長谷部がW杯で見せた覚悟・統率力 「0-1で黒星OK」に賭けた他力本願戦略の胸中

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2010年南アフリカワールドカップ直前のイングランド戦(グラーツ)からキャプテンマークを託されて足掛け8年。岡田武史監督(JFL・FC今治代表)を筆頭に、アルベルト・ザッケローニ(UAE代表監督)、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチ、そして西野朗と5人の代表指揮官に「天性のリーダー」と位置付けられてきた男はどうすればチームを1つにまとめられるかを自分なりに模索してきたはずだ。

その1つの答えが「どんな混乱の最中にいてもブレないこと」だった。日本人は調和や協調を好む傾向が強いが、上に立つ者は時に自分から強引に周りを動かさなければいけないことがある。それは2002年日韓、2006年ドイツの両ワールドカップでキャプテンを務めた宮本恒靖(ガンバ大阪U-23監督)もしみじみと語っていたこと。

長谷部は長い長い年月をかけて、その境地にたどり着いたのではないだろうか。

「選手同士で終わった後、話をしましたけど、この世界は結果論なので。リスクは間違いなくありましたが、勝負に徹したと言うか。セネガルがコロンビアに追いついていたら批判のされた試合の運び方だったと思いますし、サッカーの世界ではいろんな議論があると思いますけど、真実は結果の中にしかない気がします。

万が一、敗れて敗退が決まっても、チームメートを信頼していたので、後悔は一切ないと試合前から思っていました。そう思わせてくれる仲間がいることを幸せに思うし、次があるというのはより嬉しいものでもあります」

ベルギーの高い壁を越えたときに初めて持つ意味

結果的に賭けに勝ち、自身2度目の決勝トーナメント行きを手繰り寄せた34歳のベテランMFは心からの安堵感を吐露した。アクシデント的にキャプテンマークを与えられた8年前とは違い、今回は自分が中心となってリードしてきた代表での成果である。達成感は全く異なるはずだ。

ただ、本当の戦いはこれから。

日本代表史上最高のキャプテンと称される長谷部には、「史上初の8強入り」という日本サッカー界の悲願が託される。7月2日(日本時間3日午前3時キックオフ)の次戦の相手は優勝候補の一角に挙げられるベルギー。昨年11月にはハリルホジッチ監督の下での欧州遠征において0-1で苦杯を喫している因縁の相手でもある。

その高い壁を超えた時、初めて今回の他力本願戦略をチームに徹底させたことが大きな意味を持つ。世界中の人々から批判を浴びようが、日本は今回のロシアワールドカップで戦い抜くという強い意思を改めて示しつつ、次の決戦でもチーム全体を力強く統率してほしいものだ。

(文中敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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