銀座に今も残る、1930年代築ビヤホールの美 360度カメラで「銀座ライオンビル」を探訪

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創建当時の雰囲気を残すビヤホール内部(編集部撮影)

1978年までこのライオンビルにあったサッポロビール本社が隣に新築移転したのを機に建物を改装。その際も、このビヤホールは「生ビールの殿堂」としての風格を損なうことがないようにと、厨房設備のリニューアル以外は改築が行われなかったそうだ。

銀座ライオンビルの設計者は菅原栄蔵。1892年生まれで、1922年に建築家として独立した菅原は、関東大震災の復興期に銀座にはライオンビルのほか、新橋演舞場、新橋花柳界の見番(芸妓の稽古場や事務取次事務所)の作品を残している。そのなかで現存しているのはライオンビルのみだ。

ビヤホールライオンのインテリアには、絵が好きだったという菅原栄蔵の才能と趣味が反映されている。

室内装飾のテーマは「豊穣と収穫」。壁タイルの色は「大地」をイメージした赤褐色。太い柱の上部には、ビールの原料である麦の穂を表現したタイルがあしらわれているが、これら柱、壁用のタイルは、陶芸家として著名な小森忍が作成したものだ。

また、天井から下がる照明のデザインは、ブドウの房をモチーフにしたものとビールの泡を表す水玉模様が描かれたもの。それぞれが幻想的な光を放っている。

ビヤホールの目玉・モザイク画は圧巻

そしてこのビヤホールの象徴ともなっているのが、入口を入って正面奥に見える大きなガラスモザイク画。描かれているのは、古代ギリシャ時代のコスチューム姿の女性たちが大麦を収穫する様子で、大麦以外にもブドウがたわわに実り、アカンサス(地中海大アザミ)の花が咲いている。

モザイク画の原画は設計者・菅原栄蔵自身によるもの。画面近くまで近寄って眺めると、女性たちの体型や表情は西洋風ではなく、どことなく日本女性風。タイル画の製作はガラス工芸家・大塚喜蔵によるもので、全体の色調を整えるのに苦心し、完成までに約3年の歳月をかけたという労作だ。

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