神戸製鋼「意外に静かな」株主総会に漂う不安 データ改ざんは刑事事件に発展、海外訴訟も

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ただ、会社側は今2019年3月期業績について、純利益が450億円と前期比29%減を予想する。品質検査データ改ざん問題は経常利益を100億円押し下げる見込みだ。これには顧客への補償費用は見込んでいない。「すべての顧客と話が済んでいるわけではなく、計画には織り込んでいない。リスクとしては一定程度出てくる」(神鋼)という。東京地検と警視庁の捜査の影響は「予測できない」(同)とするのみだ。

さらに納入先には国内企業だけでなく、海外企業も含まれている。神鋼は、米国司法省から不正に関する書類提出を求める「召喚状(サピーナ)」を送付されている。調査の結果次第では、課徴金を課される可能性もある。山口社長は「現段階では司法省と協議している段階。現時点で調査の完了や罰金額については見通すことは困難な状況」とした。

海外訴訟の請求額ははっきりせず

またカナダ、米国で合わせて3件の損害賠償を求めた訴訟も起こされるなど、問題の影響は海外まで広がっている。株主からは、「訴訟の見通しについて、仮定の話で返答できないのであれば、請求されている賠償額を言ってほしい」 との質問も出た。

質問に議長を務める山口社長は「カナダ、米国の民事訴訟については、訴訟を提起した先から、いくら賠償しろ、とか請求金額はまだ来ていない。従ってコメントできない」と回答するのみだった。

神戸製鋼所の東京本社。品質データ改ざん問題は今後も経営のリスク要因として残る(撮影:尾形文繁)

米国で訴えられているのならば、会社がひっくり返るような高額な賠償金支払いを求められるのではないか。本当に神鋼は大丈夫なのか――。

足元の業績は悪くはないものの、そうした不安感が、どんよりと澱(おり)のように漂っている、といったところが神鋼の株主や取引先の心境ではないだろうか。

総会に出席した株主数は497人と前年に比べ3割弱増えたが、総会時間は昨年より4分少ない1時間45分だった。巨大リスクを抱える名門企業の株主総会は、思いのほか静かに終了した。

鶴見 昌憲 東洋経済 記者

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つるみ まさのり / Masanori Tsurumi

紙パルプ、印刷会社等を担当

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