神戸製鋼「意外に静かな」株主総会に漂う不安 データ改ざんは刑事事件に発展、海外訴訟も
「信頼を裏切ったことは痛恨の極み。株主や取引先の皆様に深くおわび申し上げます」。
神戸製鋼所は6月21日、アルミニウム・銅製品の品質検査データ改ざん問題が発覚してから、初めての定時株主総会を神戸市で開いた。今月5日には東京地検特捜部と警視庁により、東京本社などが家宅捜索を受け、刑事事件に発展している。総会の冒頭、4月に就任した山口貢社長が一連の問題について陳謝した。
神鋼のアルミや銅、一部鉄鋼製品の品質データ改ざんは、昨年秋に発覚。今年3月にまとめた調査報告書によると、製品強度などのデータ改ざんは1970年代から長年続いていた。製品は航空機や新幹線、自動車など様々な部材に及び、出荷先は国内外のべ688社に上る。不正が行われていたのは国内外23カ所の工場や子会社。元役員ら幹部、少なくとも40人が不正にかかわっていた。
データ改ざん問題に株主の質問相次ぐ
総会で株主からは「社員のコンプライアンス(法令順守)意識の低下が問題の原因として指摘されているが、それは違うのではないか。不祥事が起きると、会社は現場に責任を押しつける。不祥事を起こす企業風土を作ったのは会社だ」とか「末端の声をすくい上げる縦のラインが機能していなかったのではないか」といった厳しい指摘が相次いだ。
山口社長は、「一連の問題を現場の問題として片付けるつもりはなく、経営陣の問題と理解している。現場の声を拾っていく」などと答え、経営陣と社員の意識や組織風土の改革を進めていく考えを強調した。再発防止策として外部有識者の登用や全社的な品質保証部門の見直し強化を行うことも説明した。
この問題で川崎博也社長兼会長(当時)は4月1日付けで引責辞任。神鋼は、データを改ざんした製品の出荷先688社における安全性の確認を進め、現時点では687社で安全性を検証済みとしている。問題発覚当初は、底無しの補償費用や際限の無い顧客離れを覚悟せざるを得なかった。が、それに比べれば事態は改善の方向に向かっているようにも見える。
実際、神鋼の前2018年3月期業績は経常利益が711億円、純利益が631億円と、経常損益は2期ぶり、純損益は3期ぶりに黒字転換した。品質データ改ざんは、販売減少などで経常利益を80億円押し下げ、顧客への補償費用が加わり、最終段階では計120億円の押し下げ要因となったが、鋼材市況と中国の建設機械市場の回復が全体を支えた。2期ぶりに復配も果たした。
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