安倍首相の狙いは「総裁選の消化試合化」だ なぜ国会の会期を大幅に延長したのか

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ただ、4月16日の会談で岸田氏は「総裁選に出ないとは言わなかった」(側近)とされるだけに、首相は会期延長にあたって岸田氏に改めて「総裁選では私を支持してほしい」と間接的に出馬辞退を促した可能性は大きい。これに対し、「最後まで情勢を見極めて(出馬の可否を)決める」と繰り返してきた岸田氏は、延長国会の結末や、日朝交渉などでの首相の対応を見極めたうえで、出馬の可否を判断する考えを伝えた、というのが大方の見立てだ。首相との間ではなお神経戦が続くとみられている。

そうした中、加計学園問題の当事者で、首相の「腹心の友」の加計孝太郎同学園理事長が19日午前に突然記者会見した。岡山県内にある同学園内での緊急会見で、加計氏はいわゆる「愛媛文書」に記載されていた2015年2月25日の首相との面会について「記憶にも記録にもない」と否定するとともに、愛媛県や今治市に首相と加計氏の面会を「虚偽報告」した同学園事務局長を減給処分とし、自らの年俸の一部も自主返納したことを明らかにした。

会見は岡山県政記者クラブの所属記者に限定され、わずか25分間で終わった。加計氏は国会で大問題となった官邸での首相との面会について「記憶にもなかったし、(調べたが)記録にもなかった」と否定し、首相との関係についても「もう何十年来の友達だが、仕事のことを話すのはやめようというスタンスでやっている。政治の話は聞いたことはあるが、こちらの話は興味ないと思う」などと説明、記者団との押し問答になると、司会者が「校務がある」として記者団の質問を打ち切った。

加計氏の公式の場での説明はこれが初めて。昨年春の問題発覚以来かたくなに口をつぐみ、マスコミの取材も避けてきたのは、首相への強い配慮からとみられていた。その加計氏が突然自ら記者会見を開いたのは「マスコミ報道を意識した行動」(立憲民主党)とみる向きが多い。

会見前日の18日には大阪府北部を震度6弱の強い地震が襲い、4人の死者も出る大災害となった。さらに、19日深夜にはサッカーW杯で日本の初戦となるコロンビア戦が行われた。このため、加計氏の会見に関する19日午後以降の報道は極めて限定され、民放各局のワイドショーも20日は「サッカーと地震災害で手一杯」(民放幹部)の状態となり、加計氏会見はほとんど取り上げられなかった。

対北朝鮮での強硬路線も一変させ、3選へアピール

「サランスクの奇跡」と日本中が歓喜したサッカーW杯での初戦勝利も、首相に味方した。勝利が決まった19日深夜、首相はインターネット交流サイト(SNS)のインスタグラムなどを通じて「やったー! チームプレーの大勝利。感動をありがとう!」と祝意を示し、「いいね」の書き込みが殺到した。

意を強くした首相は会期延長を決めた20日午後に都内で開催された全国信用金庫大会でのあいさつでも「日本がコロンビアに勝った。やればできる。諦めずに、可能性を信じて、最後まで頑張っていく。これが勝利につながった」とこぶしを振り上げ、会場は大喝采だった。こうした状況について自民党内では「節目で必ず神風が吹く。首相は本当に強運だ」(国対幹部)と感嘆の声も上がる。

その一方で、米朝首脳会談を受けての日朝首脳会談実現への意欲表明も首相の3選戦略の一環とみられている。首相は米朝首脳会談後の初の国会答弁となった18日の参院決算委員会で「最後は私自身が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と向き合わなければならない」と日朝首脳会談開催の意欲と自信を強調した。

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