安倍首相の狙いは「総裁選の消化試合化」だ なぜ国会の会期を大幅に延長したのか
併せて「拉致問題の解決には大きな決断が必要となるが、金委員長には米朝首脳会談を実践した指導力がある」と金正恩朝鮮労働党委員長を評価するなど、北朝鮮に対する「最大限の圧力」を訴え続けた従来の対北強硬姿勢を一変させた。首相は「何としても安倍内閣で解決したい」とも述べ、日朝交渉の進展には総裁3選が必要だとアピールした
そうした中、首相は20日夜、政権を支える麻生太郎副総理兼財務相や二階俊博自民党幹事長らと都内のステーキ店で会食したが、総裁選日程については9月上旬にも告示すべきだとの認識で一致した。総裁選繰り上げ論は早い段階から首相サイドがひそかに検討していたものだ。9月は11日からの「東方経済フォーラム」(ウラジオストク)に合わせて検討されている日朝首脳会談など、首相にとって重要な首脳外交が相次ぐ。このため、首相サイドでは8月下旬告示、9月上旬投票という日程も視野に入れているとされる。
これまでの例から、今回総裁選は9月10日告示、22日投開票というのが「常識的な日程」(自民幹部)とされる。選挙運動期間を考えると仮に9月上旬告示となれば投開票日は中旬となる。その場合、首相のロシア訪問は11日からのため、その間は総裁選候補者の地方遊説は首相不在となり、首相は帰国直後に投開票日を迎えることになる。そうなればマスコミの総裁選報道は限定され、もし歴史的日朝会談が実現すれば、その時点で報道は「日朝一色」となって総裁選がまったく取り上げられなくなる可能性も否定できない。
もちろん、こうした3選戦略にも落とし穴は少なくない。会期を大幅延長したため、首相が「絶対認めない」としてきた森友学園問題での昭恵夫人の国会招致の問題はくすぶり続け、加計氏が会見したことで、自民党内からも「どこかで会見でもしないと、いつまでたっても終わらない」との声が出始めている。また、延長会期で成立させる方針のカジノ法案は国民の多くが反対で、突然自民党が提出した参院定数「6増」の公選法改正案も国民の反発は強い。
「やってる感」満載の安倍劇場に死角も
さらに、首相が意欲を示す日朝首脳会談も「リスクだらけ」(外務省幹部)とみられている。北朝鮮側は「拉致問題は解決済み」との従来の立場を変える気配はなく、外交専門家の間でも「首相は期待値を高めすぎた」との不安が広がる。日朝首脳会談が実現しても金委員長が「解決済み」と明言すれば拉致被害者帰国の道は閉ざされ、国民の批判は必至だ。
首相は21日、地震に襲われた大阪府北部の被災地を急遽視察した。首相は小学校で献花した後、記者団に「二度と悲惨な出来事を起こしてはならない。全国のブロック塀の緊急点検を行い、学校の安全を確保していきたい」と強調。また、被災自治体への財政支援として、普通交付税を前倒しで支給する方針を表明した。こうした行動は「まさに臨機応変」(側近)ではあるが、永田町では「見え見えの人気取り」(閣僚経験者)と冷笑する向きも多い。
野党の弱体化は進む一方で、自民党や霞が関官僚の「1強首相」への過度な忖度による不透明な政権運営がなお続く中、「首相主演の"やってる感"満載の安倍劇場」(自民長老)に対する自民党内の不信、不満が「首相の3選戦略の死角」(同)となる可能性もある。
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