かけ声で終わる「同一労働同一賃金」の残念さ 最高裁判決では賃金格差は埋まらない
最高裁は今月初め、正社員と非正規社員が同じ仕事をした場合に生じる賃金格差の一部を不合理だとする判断を下した。これが、大変革のきっかけとなるか、あるいは小さな1歩にとどまるかは安倍晋三首相にかかっている。
安倍首相は長らく、正規労働者と非正規労働者の「同一労働同一賃金」を訴えてきた。そうであるならば、安倍首相は目的を果たすために、今回の最高裁判断を利用することが可能だ。厚生労働省の労働基準局に、似たような「不当な」賃金格差のある企業を調査して、違法な企業には「是正命令」を下すよう命じることができるからだ。
安倍首相は同一労働同一賃金に対して何もしていない
当然、必要な人員と予算は投じなければならないだろう。しかし、非正規社員たちが最高裁判決を利用して労働基準局に苦情を訴えるべく殺到しないかぎり、安倍首相がそうすることはないだろう、と同一労働同一賃金問題に詳しいある弁護士は話す。つまり、今回の判決は、漸進的な影響を及ぼすに過ぎないだろうという見方だ。
安倍政権は、正社員と非正規社員の時間給の40%の格差は法外であると認めており、その差が約20%である欧州の水準に近づけたいとしている。しかし、おそらく産業界が反対するためだろうが、安倍首相はその目標を達成するために何ひとつしていない。
5月に国会が、時間外勤務手当を含むさまざまな労働問題に影響を及ぼす法案を通したとき、安倍首相にはこの問題に取り組むチャンスがあった。この法律には同一賃金問題に関する条項はあるが、新規のものはほぼ何も含まれていない。このため、実際の状況にはほぼ影響を及ぼさないだろうと、長島・大野・常松法律事務所の柳澤宏輝弁護士は言う。
今回最高裁は、トラック運送会社が、同じ仕事をしている正規社員と非正規社員の待遇に差を設けるのは、日本の法律に照らし合わせて、不合理であると判断した。日本の法律は、企業は同一労働に対して同一賃金を支払わなければならないとしているが、この法律には経験や能力といった格差をつけるべき「妥当な」基準がある場合には、さまざまな例外を許容している。
もちろん、いくらかの例外は必要だろう。さもなければ日本の年功序列体制は違法になってしまう。しかし法律は、何が「妥当」で、何が「不当」であるかを明確に定めていない。賃金格差が不当であると証明する負担は労働者たちに課せられており、裁判所はケースバイケースで状況を吟味しなければならないのである。
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