バルミューダ「高級トースター」の次の生き方 寺尾社長が語る商品開発からIPOまで

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寺尾社長自ら絵コンテを書くというカタログ。今夏用だ(写真:バルミューダ)

――ただ、違うジャンルを出したからといって、その都度消費者に受け入れられるとは限りません。バルミューダが新商品を出すたび売れるのは、なぜなのでしょう。

消費者とのコミュニケーションは、かなりの情熱をかけてやっている。それが伝わっているのではないか。たとえば、Webページやカタログに載せるグラフィックに対する作り込みのレベルは、ほかとは全然違うと思う。

カタログに美味しそうな食べ物の写真を載せることになったら、私やグラフィック担当のチームが絵コンテを書くことからはじめる。そのあと、キッチンチームが実際に料理を作って、社内のスタジオで仮撮影をして、最後に本撮影。最初は私も写真を撮っていたが、料理の写真は本当に大変だ。テーブルの上でスタイリングをしているうちに、もう溶けたり冷めたりする。1つの写真を撮るのに、かなりの情熱を傾けている。キャッチコピーや、商品の説明文なども同じ。

こうしたコミュニケーションの設計は、商品発売の9カ月も前から始まる。毎週会議を繰り返して、何度もダメ出しして、改善案を出して、「これで、欲しくなる?」と問い直す。担当者がもう嫌になるほどの繰り返し。いいかダメかを判断するのは、私だ。

「世界の役に立つ」のが目的

――社長のセンスに共感してくれる人が買ってくれればいいというのは、バントのファンとの関係にも似て、絞り込む潔さを感じます。ただ、徐々にメジャーになってくる中で、そこからさらに絞り込むのか、マスを目指すのか、葛藤はないですか。

オフィスにギター。音作りはもの作りに通じるところがあるのかもしれない(撮影:今井康一)

絞り込みがセンスということなら、さらに先鋭化してもいいと思う。「俺たちが最高だ」と思うものを、一番いい状態で提案することをやっていくだけだ。

一方、会社の規模は最速で拡大させていく。急ぐ理由は、私達が最後に行きたい場所がとても遠いから。会社の階段の踊り場にでかでかと掲げてあるように、「世界の役に立つ」というのが目的だ。役に立つ方法はさまざまだが、私たちの場合は、消費者に「笑って」いただきたい。

――笑ってもらうというのは、人の感情を動かすということ。機能を進化させれば済む話ではなく、アプローチの仕方が難しそうです。

そこに、バルミューダにとってのチャンスがある。物事には数字で測れない芸術的側面と、測定できる機能的側面があると思う。そして多くの消費者は、「コト消費」が叫ばれる遙か昔から、芸術的側面でものを買っていると思う。

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