ダイソン、「掃除機発」の技術で挑むEVの勝算 創業者ジェームズ・ダイソン氏を直撃

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英家電メーカー・ダイソンでは、創業者でチーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏によるゴーサインが出なければ、製品化はされない(撮影:今井康一)
「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」のキャッチコピーで知られる英家電メーカー、ダイソン。1993年に、インダストリアル・デザイナー兼エンジニアのジェームズ・ダイソン氏が創業した。最近では毎年600億円を研究開発に投じるテクノロジー企業として、デジタルモーターを中心としたさまざまな技術を進化させてきた。
その結果、掃除機のみならず、羽のない扇風機「クール」、穴の空いたヘアドライヤー「スーパーソニック」など、さまざまな製品を生み出してきた。3月20日には、吸引力を向上させ、60分間充電が切れないコードレス掃除機「ダイソンサイクロンV10」を発表した。価格はグレードによるが、およそ7万円~10万円。記者会見で登壇したダイソン氏は、「すべてのコード付き掃除機に取って替わる」と語った。
さらに、2017年には20億ポンド(3000億円)を投じてEV(電気自動車)開発に参入することも表明。2020年には最初の製品がお目見えする予定だ。単なる家電メーカーにとどまらない展開を始めたダイソン。はたして、EV参入に勝算はあるのか。創業者で同社のチーフ・エンジニアを務めるジェームズ・ダイソン氏に話を聞いた。

コア技術はモーターとバッテリー

――ダイソンのコア技術は独自のアルゴリズムによるデジタル制御を行うモーターと、バッテリーにあるかと思います。新型コードレス掃除機に搭載されたものは何が進化したのでしょうか。

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新しいモーターは設計をゼロから見直し、7年かけて開発した。材料にセラミックを使うことで、強度を従来比で3倍、重さを半分にしつつ、毎分の回転数を1万5000回増の12万5000回にすることができた。今後もさらに軽量化を進めたい。

リチウムイオン電池も最新だ。これまで、電池を増やすと電圧が下がってしまうのが課題だった。そこで今回は、重量を増やさずに稼働時間を延ばすために、エネルギー密度(一定重量当たりの蓄電容量)を高めたバッテリーを開発した。

今回発表された新型コードレス掃除機「ダイソンサイクロンV10」(撮影:大澤誠)

結果、(従来モデルよりも20分長い)60分の稼働時間を実現することができた。バッテリー切れに煩わされることなく、家中を掃除することができる。モーターとバッテリーの双方がうまく連携することで、革新的な掃除機になった。

――モーターの開発・製造には、過去15年間で累計3億5000万ポンド(約510億円)と巨額の投資をしています。開発した技術は、掃除機以外、たとえば現在開発中のEVにも応用できるものですか。

2016年に発売したヘアドライヤー「スーパーソニック」には、このモーターの技術が応用されている。EVにどのように応用するかは詳しく言えないが、何らかの形で研究の成果を活用する。

(家電と)EVのモーターは大きな違いがあり、自動車用途に到達できるかが課題だ。もしかしたら、従来とはまったく違う形になるかもしれない。

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