ダイソン、「掃除機発」の技術で挑むEVの勝算 創業者ジェームズ・ダイソン氏を直撃

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――そもそもこれまで家電を作ってきたダイソンが、EVに参入する理由は何なのでしょう。

根本には、自動車の排気ガスによる大気汚染への問題意識がある。ダイソンは1990年から10年をかけ、サイクロンフィルターの研究をしてきた。ディーゼル車の排気システムに取りつけて有害物質が出て行くのを防ぐものだが、製品化には至らなかった。ディーゼルはガソリン車よりも環境に優しいということで、EU(欧州連合)が「クリーンディーゼル」を推奨したからだ。

ダイソンが強みを持つデジタルモーター。独自のアルゴリズムによるデジタル制御を行う(撮影:大澤誠)

その後、2015年には独フォルクスワーゲンによる排ガス不正問題が発覚した。自動車メーカーが大気汚染問題の解決に真面目に取り組んでいなかったことが明るみに出ている。

もう1つの理由は、自動車がわれわれのテクノロジーのアウトプット先として格好の製品だということ。僕は”石油派”ではないが、クルマという製品として技術を活用するのはありだと思った。

今、自動車は変革の時期を迎えている。ダイソンは大気汚染問題への対応に加え、(コア技術である)モーターと電池、加えて自動運転システムなど、新しい技術の研究も着々と進めている。今、手元にはEVを作るためのあらゆる技術があるといっても過言ではない。

英高級車メーカーからも人材を呼び寄せる

――環境問題の改善が目的であれば、ある程度量産することが必要です。販売台数はどの程度と考えていますか。

販売台数は、どれくらいお客さんが買ってくれるかによるだろう。もちろん、社会で普及するに越したことはないが、自動車のビジネスはまだ始めたばかりだ。

新型掃除機の発表会で、ジェームズ・ダイソン氏は自ら実演してみせた(撮影:大澤誠)

――ダイソンの自動車事業には現在400名のスタッフが働いており、研究開発人員を300人追加補充するとのこと。英高級車メーカーのアストンマーチンから来た人もいるとか。

アストンマーチンから来た人が何人かいるのは確かだ。もちろんそれだけではない。詳しいことは秘密だ。

――2015年には米ミシガン州のベンチャー「サクティ3」を9000万ドル(約100億円)で買収し、次世代のEV電池といわれている「全固体電池」の研究開発も進めています。その進捗状況は。

これも発表するにはもう少し時間がいる。私ですら、待っている立場だ。残念ながら、EVの開発に関する情報は機密性が高く、答えられない。重要な新事業なので、他社にまねをされるのは大きなリスクだと考えている。

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