バルミューダ「高級トースター」の次の生き方 寺尾社長が語る商品開発からIPOまで
今まで私の頭の中には、「会社とお客さんがどこまで噛み合えるか」しかなかった。上場したら、ここに株主というギャラリーができることになる。せっかく素晴らしい試合をするのなら、相手と自分だけより、山ほど観客がいたほうが燃えるだろう。仮にヤジが飛んできたとしても、「もう、いいから全員まとめて幸せにしてやるわ」とガッツが生まれる。
それに向けて、管理体制も強化していく。私のこれまでの人生は基本、「勘と気合いとラッキー」で彩られてきたため、管理は大の苦手。創業当初の社員数が少ないときは野武士の集団で、各人が朝出て行って、夕方帰ってきて、成果がある人もない人もいる、という仕事のやり方だった。
だが、100人の会社でそれをやったら成り立たない。連絡経路を明確化し、開発のプロセスのルール化をしている。部品の購入も、細かいものまで稟議書をあげなくてはいけない。これにより、これまでのようなスピードで開発ができなくなるかもしれないが、業務の質は確実に良くなる。
どれだけ興奮しながら仕事をできるか
ただ、現時点では、そこまで大きな資金調達の需要がない。会社が小さなときは、家電を一つ作るために、びっくりするような金型代がかかっていた。ただ、現在は会社の規模が大きくなる中で、相対的に金型代の負担は少なくなってきた。
むしろ、今の一番の悩みは、トースターの「次」の大ヒット商品が生まれていないことだ。今年の秋に出るものが、それくらいのヒット商品になればいいな、と。今はちょうど開発が山場に差し掛かったところで、涼しくなるころには皆さんにお知らせできると思う。
――出したからといって、必ず当たる保証はありません。ミュージシャンから転身して会社を立ち上げた社長にとって、もともと商品を作るのは、歌を歌うような「自己表現」だったかもしれません。今、そこに変化はありますか。
会社のコアは私でしかあり得ないが、100人を超える仲間がいるのは大きな違いだ。設立当初は冗談ではなく、失敗したら自己破産すればいい、臓器を売ろう、と思っていた(笑)。
だが今は、社員に対する責任がある。責任といっても、路頭に迷わせるんじゃないか、という意味での責任感はあまりない。どれだけ、興奮しながらできる仕事を提供できるか。社員は、いわばバンドのメンバーだ。
社員も、おそらく安定よりは興奮を求めている人が多いと思う。「やり方は特殊だが、いい商品を作っている」と。大手家電メーカー出身のエンジニアも多いが、それを求めていないと、採用面接に来ないと思うんだよなあ。
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