バルミューダ「高級トースター」の次の生き方 寺尾社長が語る商品開発からIPOまで

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日本の大手家電メーカーが、芸術的側面が売買対象になっていることに気づいているかどうかは、よくわからない。ただ、彼らには戦後の高度経済成長期にどんどんものを作って、バンバン売れたという成功体験がある。洗濯機のない世帯が日本中にある中で、洗濯機を出せばそれは売れますよ。そして、そのただ中にいた人が今社長になっているのではないか。

一方、21世紀生まれのバルミューダにはこの成功体験がない。トースターを持っていない家など少ない中で、成長するためには、買い替え需要を凌駕する売り方をしなくてはならない。難しいが、縛られる過去がないのは強みだ。

芸術的な価値というのは、数字で測れないから、結局、自分が欲しいかどうかで価値判断することになる。それによって売れるかどうかが変わるのなら、ここが私の責任の取りどころだと思う。

30商品ぐらいのアイデアがある

――メディアでは、バルミューダが「おしゃれ家電」として紹介されることもあります。

おしゃれかどうかなんて、全然気にしていないし、デザイン家電メーカーと名乗ったこともない。あらゆるデザインもインターフェースも、お客さんを喜ばせるために追求しているものだ。むしろ、「ここを綺麗にしすぎると、ちょっと引くよ」と、あえてまぬけなデザインを選ぶこともある。

大ヒットしたトースター。炊飯器や電子レンジなどに”横っ飛び”した(写真:今井康一)

ただ、結果として評価してもらえるのは素直にうれしい。現在、海外売上高も飛躍的に伸びているが、一番人気が韓国だ。トースターだと、今は日本と同じくらいの台数が売れている。韓国の人々は、外見に対するこだわりがとても強い。おそらく、世界一強いと思う。われわれが注力しているポイントの1つであるデザインが評価されているのはいいことだ。

――会社の規模を拡大させるための手段とは?

まず、商品ラインナップはもっと拡大する必要がある。私の企画ノートには、あと30商品くらいのアイデアが書いてあるんだから。その中には、家電というジャンルでくくれないであろう商品もある。共通しているのは、「家の内外で電機を使う道具」である、ということのみ。

IPO(新規株式公開)には、強い興味があり、道々あると思っている。先日、初めて決算公告を出して、官報に載った。それがツイッターで話題になり、いいも悪いも言われた。その画面を見たとき自分の中で変化があった。「こりゃうれしいな」と。

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