稼ぎが少ない夫が家事を放棄する「深い理由」 「プライド」と「見栄」の狭間で揺れる男たち

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少なくない男性が自分は「プライドが高い」と思っており、同時に、少なくない女性が「男性のプライド」を尊重しなければと思っているようです。しかし、ほとんどの場合、「男性のプライド」は「男性の見栄」にすぎません。プライドと見栄は別物であり、プライドは尊重すべきですが、見栄は自分にとっても他人にとっても迷惑なものです。

プライドとは、何かを達成した際に、人がその成果に誇りを持つことで生まれる感情です。努力しなければプライドを確立することはできませんし、何より他人との比較ではなく、自分がどれだけ納得できるかが重要になります。

それに対して、見栄とは、人目を過剰に気にして、うわべだけを取り繕おうとする態度です。見栄を張りたい人は、つねに自分と他人を比較し、自分が勝っていないと満足できません。だから、見栄にこだわる男性は、他人を見下したような態度を取ります。

相談者さんが見栄に付き合い続ければ、いつまでも家事の負担は軽くなりませんし、何より夫も他人との比較から抜け出せません。専門性を活かして正規の職が得られても、次は、きっとその中での競争に明け暮れるでしょう。せっかく正規の職に就いた夫から、「同業のあいつはろくな専門性もないくせに、過大評価されている」などという愚痴を聞きたくないですよね。

見栄から抜け出すために大切なことは、健全なプライドを確立することです。本来、専門家としての優劣と雇用形態は別ですが、しばしば混同されるため、非正規の場合はどうしても自信を失いがちです。

夫の仕事の話にしっかりと耳を傾けてみてください。驚きや発見があれば、率直に伝えてください。自分の専門性や仕事の価値を認めてくれる人がいれば、雇用形態にかかわらず、プライドを育むことはできるはずです。

高い理想だが、目指す意義は十分にある

それと同時に、自分の仕事の話も夫に聞いてもらってください。自分にとっては当たり前の内容でも、夫の側からはきっと驚きや発見があるはずです。お互いの仕事の価値について、認め合うことができれば、そこには自ずと敬意が生まれてくるでしょう。

適切なプライドを持った夫婦が、お互いに敬意を払えるようになる。子どもが生まれれば、育児にかかりっきりになって、夫婦で会話をする時間さえ確保するのが難しくなります。高い理想だとは思いますが、いまのうちに目指すだけの意義は十分にあるはずです。

田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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