たった1年で大手銀行を見放した24歳の真意 ワークライフにおける最大のリスクを考える
端的にいえば「年功序列」です。ご存じのとおり、大手銀行はわかりやすくいえばピラミッド型の競争が待つ世界。20代のヒラ行員から始まり、30代で主任から支店長代理、課長へと階段を上がり、40代から50代で副支店長から支店長、役員へと徐々に少なくなるライバルを蹴落として勝ち残る出世ゲームです。
そのルールはノルマや減点主義によるところもいまだに多い。つまり、若い世代の力を活かしきれていない組織です。社員は社員で静かに順番を待ちながら会社生活を送るというスタイルをとっていて、20代の頃は優秀だといわれた人が、30代、40代となるにつれ、輝きを失ってしまうこともあります。さらに銀行の支店が減っていく現在の状況を見れば、将来が「どうなっていくか」を想像するにかたくないでしょう。
彼女はたった10カ月で、大手金融機関における日本の古い体質をはっきりと見てしまったのです。一時期、大手銀行がリストラをするというニュースが世間をにぎわせていましたが、それ以前に、才能ある若い人が絶望してしまうような環境がいまだに維持され続けていたのです。
辞めることを決意させた友人の言葉
彼女が辞めた2つ目の理由である「自分がミッションと思うことに懸けてみたい」というのも、今の若者をよく表す言葉です。水谷さんは早くに大手金融機関を辞めて、知人から誘われていたアグリテック(農業技術)の会社に行くことにしたといいます。理由はとてもシンプルで、かねてから「自分としてもやりたいと思っていた」からだそうです。
彼女に転職を真剣に考えるようになったきっかけを聞いたところ、「遅い夏休みを取って、10月に米国ボストンにいる大学時代の友人のところへ遊びに行ったことです」と答えてくれました。彼女は次のように語ってくれました。
「ボストンのメディカルスクールで学んでいる友人には、自分が学びとった知識で、どのような人たちのどのような問題を解決していきたいのかという確固たるミッションがありました。そんな友人に対して、私は本当は食べ物に人一倍の思い入れがあったにもかかわらず、結局は大手金融機関に就職してしまった。自分の就職は世間の就職人気度で選んだものであり、留学中の友人が描いている就職先はミッションに基づいたものでした」
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