世界初!再生医療で「薄毛」治す新療法が始動

薄毛に悩む潜在患者1800万人に朗報

毛髪ならではの問題もある。髪の毛だけに移植する数がケタ違いに多いのだ。やけど用の皮膚シートは40枚、ひざ軟骨治療用片は数個と、これまでの再生医療で使われる細胞製品の数はそれほど多くない。ところが、毛髪再生では、移植が頭頂部すべてとすると、少なくとも毛髪5000本は必要。原基に換算すると2500個以上が必要になる。

自動培養・製造装置を京セラと共同開発

この問題を解決したのが、京セラと2016年から共同開発してきた自動培養・原基製造装置だ。人手にたよる部分を最低限に押さえ、工程を機械化することによって大量培養と安定した品質を確保でき、再生医療製品として規格化が可能になった。これが臨床研究に向けて一歩を踏み出す大きな力になった。

再生医療の臨床試験で最初の課題となるのは免疫反応だが、この場合、自己細胞なので心配は不要。それよりも生着して髪が生えてくる再生確率が問題だ。マウス試験では発毛頻度74%と非常に高水準。ヒトでは担当医師の力量にもよるが、この水準にいかに近づけられるかがカギになる。

辻孝・理化学研究所チームリーダー(右)と杉村泰宏・オーガンテクノロジーズ代表取締役(記者撮影)

「非臨床、臨床試験を経て安全性と一定の有効性を確認し、2020年頃には自由診療での社会実装を目指したい」(辻チームリーダー)。いきなり薬事承認を目指さないのは、病気治療ではない審美的な治療は、医療財政が逼迫するなかで保険診療に適さないという判断から。自由診療に対する偏見を払拭する狙いもある。自由診療で技術を蓄積する間に先天性乏毛症や瘢痕(はんこん)性脱毛症などの疾患の研究を進め、こちらは再生医療等製品として薬事承認を目指す。

実際に事業化を進めるオーガンテクノロジーズでは、毛髪のほかにも歯の再生や人工皮膚、再生皮膚器官など辻チームリーダーの開発したシーズの事業化を進めている。同社は毛髪による健康診断システムの社会実装を目指すコンソーシアムも主導するなど、多彩な研究開発活動を進めている。

再生毛包器官の移植は、自由診療でもあり初期の治療単価は安くはないだろう。だが、治療件数が増えて培養・製造装置の能力が向上すれば、コストは徐々に下がってくる。エビデンスのある薄毛治療を求め、既存治療に二の足を踏んでいた潜在患者1800万人の熱い期待が集まっていることは間違いない。

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