健康データ満載、「毛髪」の秘められた可能性 18法人が集結、「気軽に健康診断」を目指す
理化学研究所の辻孝・器官誘導研究チームリーダーが毛髪診断について会見を開く、との報に、いよいよ毛髪再生医療のヒトへの応用が実現するのか、と色めき立った向きも多かった。辻チームリーダーがマウスにiPS由来の人工皮膚細胞を移植してヒトの毛髪が生えるなどの成果を出したのは2016年4月。同年7月には京セラ等と臨床応用を目指して共同研究を行うと発表していたからだ。
だが、2017年12月27日、会場で発表されたのは、毛髪を使った新しい健康診断法の構築のためのコンソーシアム設立だった。理研のほか、アデランス、ヤフーなど民間企業、公益財団法人先端医療振興財団など18法人が集結、「毛髪診断」の実用化を目指す。
「毛髪には健康データが蓄積されている」
残念ながら毛髪の再生ではなかったが、面白いアイデアだ。確かに、髪の毛で健康診断ができるなら手軽で時間もかからない。
従来の健康診断では血液採取などの侵襲性のある(痛みを伴う)検査が含まれているうえ、前夜から食事も水分も制限され、しかもそうやって取った数値は変動しやすく必ずしも実態を表わさない。
とくに病気が発症していない未病の段階では、エビデンスとして不十分であることがわかっている。また現行の健康診断は長時間の拘束が前提であり、受診者個人の負担も社会的コストも小さくない。髪の毛を送るだけなら、この負担を大幅に軽減できる。
「毛髪は、最近まで生きていた細胞の標本で、その時点での健康データが蓄積されている」と辻チームリーダーは言う。髪の毛は、毛穴の一番奥にある毛乳頭で作られた毛母細胞が分裂してできた細胞内部に、タンパク質(ケラチン)が蓄積し、その後死んだ細胞の集合体だ。頭髪は月に1センチメートル伸びるので、根元から1センチメートルのところには1カ月前の、12センチメートル先には1年前の体の状態の情報が詰まっているという。
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