健康データ満載、「毛髪」の秘められた可能性

18法人が集結、「気軽に健康診断」を目指す

毛髪から得られるデータは案外多い。ゲノム情報はもちろん、タンパク質やミネラル、脂質、ホルモン、摂取した薬物や代謝物、食事の内容まで追跡できる。死んだ細胞に情報が固定されているので、時系列でデータを取得できる点も特徴で、「人間の組織の中で唯一過去ログ(記録)が取れるもの」(辻チームリーダー)。

しかも、血液として同等と、エビデンスとして十分な情報の質を持っている。未病のうちに疾病の予兆を発見し対策を打てば、医療費の削減にもつながる。ヒト細胞のうちもっとも採取が容易にもかかわらず、未使用だった毛髪のヘルスケアでの利用がようやくスタートする。

2年程度で1万人規模のデータベースを構築

理研の辻孝チームリーダー。皮膚科学から毛髪の可能性を追求する(記者撮影)

まず、2年程度の時間をかけ、理研が中心となって1万人規模の健康データベースを構築し、参画企業は毛髪診断システムの開発、実用化を目指す。

具体的には、企業や健康保険組合、個人向けの健康情報サービスで、そのためのシステムやアプリ、機器などの開発を進める。単なる検査結果の提供だけでなく、個人個人の健康状態に応じて改善提案を行い、数カ月後には再度検査して、改善提案の実効性の検証などもできるようにするという。

次のステップは疾患診断だ。3~5年目にかけて毛髪から疾患診断ができるようにする。

ある病気にかかると毛髪の組成に変化が起きることが報告されている。多くのがんではヨウ素が増え、肝がんではカルシウムや銅、鉄の異常蓄積がおき、乳がんの石灰化の前兆現象として毛幹にカルシウムの蓄積異常がおこる。糖尿病では特定のアミノ酸量が増える。こういった世界各地で報告されている論文をベースに、疾患のバイオマーカーの特定と開発もターゲットになる。

毛髪に含まれる重金属や薬物の代謝物の高感度検出、組成分析の技術は、麻薬取締、薬物濫用などの法科学分野ですでに確立されているが、ヘルスケアに生かそうという観点はなかった。こういった社会全体に点在する既存技術を統合してヘルスケアに生かすことも、コンソーシアムの目的のひとつだ。

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